震災から12年目の復興住宅

4月1日、以前のブログでもご紹介した西田公夫さん・敏子さんご夫妻のお宅を久しぶりに訪ねました。
4月に名古屋にご招待し、こちらでゆかりのある方々に再会したり、名城公園でのお花見の企画を立てていましたが、ここ最近急に冷え込んでいたこともあり、体調を少し崩されて、今回は大事をとって延期ということにして、こちらから遊びに行くことにしました。
神戸市北区にある「しあわせの村」の片隅に、お二人が住んでみえるシルバーハイツがあります。
ちょうど山の上に位置しているために、静かなのはいいのですが、ひんやりと静まり返って、風が強く、体の薄いお年寄りはそのまま遠くに吹き飛ばされてしまいそうです。
また、その名の通り、65歳以上の高齢者を対象としていて、高齢者世帯や単身者がほとんどで、シルバーハイツに到着してから公夫さんの家の玄関にたどり着くまでに、出会ったのはたった数人でした。
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シルバーハイツの様子
バリアフリーの引き戸を空けて、開口一番「こんにちは縲怐vと大声を張り上げると、「おぉ、よくきた、よくきた」とリビングのいすに腰掛けていた公夫さんの顔が飛び込んできました。
(おっ、思ったより元気かな)と感じつつ、お話を聞いていくと2月から少し調子を崩し、4月上旬に検査をするのでそれまで落ち着かないという胸の内を話されました。
公夫さんの楽しみはもっぱら、絵手紙を書くこと。この楽しみを続けていけるだけの体の状態を少しでも長く維持していきたいというお気持ちが伝わってきました。またその気持ちを一番良く理解され、支えていこうとされている敏子さんの気丈さにも尊敬の念を抱かずにはいられません。しかし、この役割をお一人で担っていくことの不安感は、はかりしれないものであるとも思います。「あんたらが、もっと近くにおってくれたらええんやけど」という言葉を聞くといつも胸が痛みます。
私たちは、「何かしたい」と思うがあまり、「普段二人ではできないことをしよう」などと考えてしまいがちですが、お二人にとっては、いつもと同じ、日々の営みの延長線上にあるちょっとした出来事の積み重ねが、とても価値あるものと捉えているように見えます。
私も最近、お二人にお会いする度に、テーブルを囲んでお茶を飲んだり、お台所を手伝ったりという何気ない瞬間が、とても尊いものと感じます。こういう瞬間の記憶の方が、ひょっとしたらいつまでもお互いの心の中に強く残り、日々を支える原動力になっていくのではないかと思います。
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団らんのひととき
兵庫県内では震災以降、25,421戸の災害復興公営住宅が整備されました。(※1)しかし、震災から11年をむかえ、復興住宅の高齢化が一層進み、住民同士の支え合いも難しくなってきているようです。また、住宅によっても、自治会活動が上手くいくとろとそうでないところに差が生じ、その溝を修復することが出来ずに自治会が解散してしまったところもあるそうです。
自治会を通じて、餅ちつき大会や喫茶店などのふれ合い活動が行われ、住民が顔を合わせる機会が作られ、日々の楽しみや生きる意欲につながっている人々は数多くいらっしゃると思います。しかし、この部分が様々な問題で機能しなくなると、さらに閉じこもりや孤独死が増えてしまうことが懸念されます。
復興住宅では、孤独死が一向に減らず、昨年一年で69名、累計で396人にも上っています。(※2)
行政も、各住宅に「生活援助員(LSA)」や「見守り推進員」などを置き、安否確認や生活相談などを行っていますが、それでも尚この問題は解決していません。
このような実態から、公平・平等・一斉・画一がベースになっている行政支援にはどうしても限界があり、個別化していく問題に対して、そのひとつひとつに丁寧に答えられる受け皿が11年経った今も尚、十分に出来ていない、そしてこれらを実際に整えていくことの難しさが見て取れます。
しかし、やはり支援の隙間から漏れていく人たちの声を拾い、時間をかけながら問題に丁寧に向き合っていくしかこれらの解決の道はないとも感じます。私たちは、西田さんとのつながりの中から、このような出来事が繰り返されないために、多くの方々にこの現状を伝え、学ぶべきことを見出していきたいと思っています。
※1・2)神戸新聞掲載記事より抜粋
要援護者養成講座 005