岩手・宮城内陸地震[第4報]

栗田です。お世話になります。
今回の地震対応に関しましては、以前から交流のありました宮城県社協より協力依頼される形で、一昨日より事務局長・浦野を派遣しております。また今回はNPO愛知ネットよりスタッフの派遣について相談がありましたので、同行していただいております。地震翌日からの派遣にもかかわらず、こうした迅速な対応にいたりましたのは、いずれも「顔の見える関係」があったからであります。やはり平常時からの信頼関係の構築が、災害対応の基本だと痛感している次第です。
さて、浦野からレポートが届きましたので、ご報告させていただきます。
○今日(2008.6.16)の動き


・宮城県社協・Kさん、Sさんと共に、栗原市社会福祉協議会へ挨拶
・市社協課長代理より、市内被害の概要・社協の動きについて説明を受ける
・市社協スタッフと共に、旧花山村の避難所にて、トイレ清掃・高齢者へのヒアリングを実施
・全体ミーティングに参加
○被害の概要
・栗原市は10町村が合併した地域であり、県内でも山と川の面積を占める割合が一番大きい市。今回の被害は、民家の少ない栗駒山のすそのみに集中、平野部は何事も無かったように日常生活が営まれている。
・特に被害がひどかったのは、旧花山村・栗駒町・鶯沢町。中でも、花山村の金沢地区に落石があり、さらに奥の中村・麻布地区へは、道路が寸断されたり、震災ダムの危険性があり、入れない状態。本日、行政より希望者に30分程度の一時帰宅が許可され、送迎バスで自宅に行かれた方もいる。
・指定避難所は、3箇所に設置。最大で100名規模が1件あり、他は20名以下の少人数。自主避難所が1箇所。
・花山では、断水や停電が続いており、給水車より水の確保を行っている。お風呂は15日ごろから自衛隊によって実施されているが、利用者が多いので、供給が間に合わない。
・地域の産業は、林業・農業・畜産が多い。実際仕事は少なく、減反政策の影響もあり、自分の家で食べていくだけの米や野菜を作るという家が多い。また、高齢化率は40%を超えるとみられる。
○栗原市社会福祉協議会の対応
・区長(福祉推進委員長兼務)を訪問し、ニーズ調査票を配布。片付け等の依頼があった場合は、社協で対応する旨を伝達。
・介護保険事業については、ヘルパーを通じて利用者の安否確認を実施。各事業所にはニーズ調査表を配布。利用者・職員等よりボランティア派遣の必要があれば、連絡してもらうことを伝達。
・社協では、重点支援の市特別区として「旧花山村」全域と栗駒文字地区を指定。心のケア事業企画を検討中であり、今日・明日と重点地区の避難所等でヒアリング調査を実施予定。
○被災者の声(地区最大の避難所Sセンターにてヒアリング)
・金沢地区。一人暮らし。おじいさんは中央病院に入院中。こんなに怖い目にあったのは今まで生きてきてはじめて。自分の家は集落で2件赤紙が張られたうちの1件だった。戸も吹っ飛び、ガラスも割れて、茶だんす・たんすはひっくり返ってぐちゃぐちゃの状態。発災直後は畑にいたが、揺れで前のめりに転んでしまった。持病の薬もなにも取り出せず、とにかく着の身着のままで出てきた状態。診療所から薬を届けてもらったが、できれば家にある通帳や薬などを取り出せれば・・。息子・娘がいて、来てはくれるが、家が遠い。しかし、ここにいればみんなの顔が見られるので、家に一人でいるよりはよっぽど安心。お風呂には昨日は行ってきた。夜は慣れない場所ということもあり、あまり眠れない。畑もだめになった。あきらめるしかないと分かっているが、あきらめきれない。(80代・女性)
・山内地区。発災直後、普段は腰が痛いなど、色んなことをおもってるけど、認知症のある92歳の姑を抱えながら、必死で家の外に出た。家から数メートル離れたところにござを敷いてしばらく二人でたたずんでいた。まさかこんな目に会うとは思わなかった。本当に怖かった。姑は施設に預かってもらっており、夫と二人で避難所にいる。家の中はガラスが飛び散り、家具が倒れてぐちゃぐちゃ。ここは食事もとらせてもらえて、寝床もあり、上げ膳据え膳でありがたい。寝るときは毛布一枚だけだが、羽織るものもあるし、あまり不便ではない。夜はあまり寝られない。トイレにおきる
と、そのまま3時間ぐらいねつけない(70代・女性)
・トイレは小はポータブルトイレを使い、大は仮設トイレを使う。しかし、仮設トイレまでは遠い(出口から50メートルある)ので、しょっちゅう行けない。(80代・女性)
・金沢集落。一人ではお風呂に入れない。(座椅子に座っていらっしゃったので、足が悪いと思われる)(80代・女性)
・家にひとりだった。やっぱり先が不安。家の片付けしなければいけない。畑がだめになってしまった。家から這い出てきた。(80代・女性)
・家族3人暮らし。棚が倒れた。山奥の孤立集落に住んでいるので、ボランティアでなんか誰もきてくれないんじゃないかと思う。体育館は寒い。和室のほうがあったかい。(75歳・男性)
・風呂が遠くて歩いていけないので、入れないでいる。(80代・女性)
※その他気づいたこと
・日中高齢者が多くみられた。高齢者たちは、車座になり話をしている姿が目立つ。おしゃべりをしながら、気を紛らわすという状況。いつものことだが、それ以外にやることが特にない様子。普段は田んぼや畑仕事をしながらよく体を動かしているようなので、身体機能の低下も心配される。(この日は体操の時間があった)
・一人敷布団、毛布1枚はすでに配られていて、日中はたたんであり、万年床にはなっていない。食べるところ、寝るところの区別等の環境改善を、保健師さんたちが検討中。
・避難所では、保健師と防火クラブ(消防団の女性版)が中心となり、炊き出しを行っている。メニューはおにぎりと味噌汁が中心。しかし、これらの作業に追われており、トイレ掃除や衛生管理など、改善点は気づいていながらも、など細かい部分にまで手がまわっていない様子。
・トイレについては、仮設トイレまで50メートル・和式・汚いということもあり、大を我慢している方も多くみられると思われる。また数日たてば、体調を崩される方が出てくる可能性が高い。
・とにかく、少し声をかけただけで、会話が途切れることがなかった。大半が「怖かった~」と地震のときの様子をよく話してくださった。
○今後について
・現在のニーズは「水くみをしてほしい、家の片付けをしてほしい」など数件上がっている。区長からは今のところニーズがあげられていないので、明日以降、社協職員による避難所や重点地区の在宅等へチラシの配布やニーズ調査を検討中。
○NPO愛知ネットスタッフ/南里さん主観
本日、栗原市入りし、避難所に同行させてもらい、被災者の方とお話する機会がありました。懸念していた「構えてしまう」といった感じは受けずに、お話ができて良かったです。その中で、社協の方が方言でお伺いになった時に、被災者の方の表情が柔らかくなり、お答えになっていました。方言は、被災者の方自身が普段の生活で使われる言葉なので、こちら側が方言でお尋ねすることによって、安心感を感じ、本音を言ってもらえやすいのでは・・と思います。この関係が発展していき、より良い支援のためのお手伝いができればと思います。
○浦野所感
・地震から3日たち、ようやく気持ちも落ち着いてきた様子。しかし同時に、「いつまでここにいればいいのか、これからどうしてもとの生活に戻るか」という現実問題も見えてきているようだ。不安の解消や気分転換などの取り組みがそろそろ必要になってくると思われる。KOBE足湯隊が先遣隊として来ているので、避難所での足湯の実施を調整中。
・高齢者が多いため、1日の生活支援プログラムをある程度個別に考えられるヘルパー等の専門職の対応も今後重要になると思う。(すでに、行政より3~4名の避難所へのヘルパー派遣の要請が社協に来ている様子。)