河川伝統工法の現場見学会を行いました

 皆さま
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 お世話になっております。事務局スタッフの関口です。
 2010年度の通年事業として行っている「防災の森づくり 川づくり」、ようやく「山」を下りてきて、「川」にたどり着きました。里山の木を刈り取って束ねる「粗朶(そだ)」づくりを教わったのは昨年11月から12月にかけて。その岐阜県の里山から、間伐材と粗朶を組み合わせた「河川伝統工法」の部材を持ち込み、名古屋の典型的な都市河川である矢田川に実験的に設置することになったのです。
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 作業を公開した1月31日は朝から小雪の舞う厳しい寒さでしたが、里山に入ってもらった一般参加者はもちろん、初めてこの事業に関心をもってくださったボランティアや関係者の方々15人ほどに集まっていただくことができました。
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 粗朶を扱う全国でも数少ない業者の一つである井納木材(株)の井納英昭社長の監督のもと、トラックから長さ約2メートル四方、高さ50センチほどの「お魚のゆりかご」と呼ばれるユニットが3基、クレーンで吊り上げられ、川底に沈められました。この「ゆりかご」は、間伐材の木枠の内側に粗朶や竹を詰め込み、上に玉石を載せて固定するものです。
 伝統工法は粗朶などの柔軟な素材を敷き詰めることで川底の浸食を防いだり、間伐材の木枠を川に入れることで水の勢いをコントロールしたりすると同時に、環境面でもよいとされます。素材となる木を調達することが山の手入れとなり、その木を使って川を整備することにもなる。まさに山と川の関係が目に見えてわかるのです。
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 「ゆりかご」を設置したとたん、川にせせらぎのような美しい流れが生まれました。井納さんによると、コンクリートで固められた川は流れが単調で速すぎ、魚にとって決してすみよくありません。こうして流れに緩急や変化をつけることで、魚が寄りつき、卵をうみ育てられるというのです。
 今回は予算や時間の関係で極めて小規模なプロジェクトですが、こうした都市河川で伝統工法が導入されることは現在では非常に珍しく、設置期間中に魚類調査などを行って影響を調べることにしています。治水面でも名古屋工業大学河川研究室の冨永晃宏教授の協力をいただき、今後の活用の可能性などを検討してもらえることになりました。
 当初は3日ほどで撤去する予定でしたが、その後の調整の結果、設置期間が1週間ほどに延長。さらに愛知県や名古屋市管轄の河川でも活用していただく方向で調整しています。決まり次第、このブログなどでお知らせいたしますので、ぜひご注目ください。