東京都大島町(伊豆大島)の現状について(第2報)

みなさま

お世話になります。RSY事務局です。
台風26号の被害を受けた東京都大島町(伊豆大島)の続報です。
マスコミ報道では上がってこない、住民の方々の生の声やボランティア活動の様子が
分かります。

10月17日~18日まで現地入りした、関口氏(元RSYスタッフ)および、震災がつなく全
国ネットワークやRSYと関係の深い加納氏(東京ボランティア・市民活動センター)か
らの情報提供です。

====================================
〇関口氏からの報告(10月18日現在)
【町の様子】
元町地区は町役場を含む中心街。役場のすぐ先からが被害の大きかった元町3丁目
地区です。50年ほど前に「元町大火」と呼ばれる大火事(火山とは無関係)で町の大
半が焼けてしまった後、比較的整然とした町並みに。道路は「大島1周道路」を中心
に防火帯を兼ねてかなり広い道になっています。

今回の土石流は三原山山頂付近から中腹で大きく2方向に分かれ、ふもとの神達
(かんだつ)地区をのみこみ、もう1方の流れが元町3丁目の沢沿いを襲いました。
この沢沿いには昔の立て込んだ町並みがまだ残っており、細く曲がりくねり、段差の
ある道の途中であちこちに大量の流木や土砂がひっかかり、何段階にもあふれて下流
の家々を襲いました。水害ではよくあることですが、被害のあった家のすぐ横の高台
の家は無傷といったような場所も見られます。

不明者の捜索とともに大通り沿いは重機が入って大きな流木は片付けられ、土砂も
かき出されています。日中は渇いた砂が風やトラックの出入りとともにもうもうと舞
い上がり、マスクやゴーグルがないとつらくなっています。

水道の断水が続いており、飲食店はほぼすべて閉店しています。被害の少ない雑貨
店などがちらほらと営業を始め、日用品や弁当などを販売し始めました。ちなみに役
場の目の前の社会福祉協議会はもともと書店か文房具店だった建物です。

観光地なのでホテル、民宿の数はありますが、やはり営業している店は限られます。
役場に最も近く、僕がたまたま飛び込んで1泊分だけ取れた「ホテル白岩」はNHKが
基地にしていました。断水にもかかわらず、ホテルの人たちが買ったり汲んだりした
水で普段通りの食事も出してくれ、露天風呂も使えました。しかし某社の後輩が泊
まったところは水も食事もなく、記者もカンパンで数日しのいだそうです。
【町の人の声】

大通り沿いの飲食店主(41)

「店の1階で洗い物をしていたらものすごい雨になり、外を見たら車が上から流れて
きた。これはマズイと思って午前3時10分ごろ警察に通報。そのうち停電になり、一
気に水が流れ込んできた。そこから記憶が飛んでいる。気づいたら店の冷蔵庫の下敷
きになっていた。もうだめかと思ったらもう一度水が流れ込んできて冷蔵庫が浮き、
抜け出すことができた。逆に水に助けられた。

実家は店と別なので家族も無事だが、今はただ喪失感しかない。小さな町でみんな
知っている人たち。不明者のいることがつらくて複雑。でも仲間意識は強いのでみん
なで助け合っていける。きょうも高校生が泥出しの手伝いに来てくれた。外からのボ
ランティアというのはまだ考えられない。

災害はまず火山だと思ってきた。それがこんな大雨の被害になるなんて。どこで何
が起こるか分からない。あすはわが身だということを日本中の人に思ってもらいた
い」
沢沿いの遊技場経営の女性(30)

「台風が来るので店を早めに閉めて2階で寝ていたら、雨風の音がどんどん大きく
なった。たまにゴンゴンと流木が当たるような音もしたけれど、それ以上にザーザー
という雨風の音。避難指示などは何もなく、隣に住むおじいちゃんが心配になって様
子を見に行こうと外に出たら、もう水がひざ上まで来ていた。それであきらめて引き
返したら、1階にものすごい土砂が。流木は店の看板にひっかかって、かなりせき止
められた。とにかくどこにも逃げ場はなかった。命が助かっただけましだと思う。今
は知り合いの家に避難しているけれど、この先どうしていけばいいのかは分からな
い。きれいな緑の山肌だった三原山があんな姿になるのを見るのはつらい」

 

神達地区に土地を持つペンション経営の男性(69)

「ペンションは元町1丁目で被害はなかった。神達に代々1000坪ほどの山を持って
いたのでそれを見に来た。中腹の喫茶店は知り合いが経営していて、行方不明になっ
ている。もともとは林の中を林道がジグザグに通り、民家が点在しているような場
所。見通しのきかないところだったのが、逆に何もなくなって、地元の私にも何がど
こにあったか見当がつかない。

テレビでは神達という地区が分かれているように報道されているけれど、そうではな
い。集落としてまとまっているというより、あくまで元町の一部の山側という感覚。
前回の噴火の後、避難道路として道がどんどん整備された。それとともに上の方まで
家や別荘を建てる人が増えてきた。火山、溶岩といったって人間よりはるかに長い歴
史でできたもの。危険もあるけれど、住めるところに住んできたのが大島の人たち。
元町の大火の後も復興したので、今回も立ち直れると思う」
====================================
〇加納氏(東京ボランティア・市民活動センター)からの報告(10月18日現在)

【役場関係】
・本日19時に、センター長(大島社協事務局長)、大島社協職員(災害V担
当)、東社協吉田で役場へ行き、情報交換を実施。
・本日のボランティセンター情報(活動件数・活動者数)を報告。その後、意見
交換の中で、明日の活動に際し、土砂の撤去方法について協議。これまでは土砂
を敷地内および道路に山積みしていたが、土嚢袋での処理を提案したところ、土
嚢袋の購入等については町が対応してくれることで合意。
・役場へ来ていたボランティアの問合せを社協に転送することで、ボランティア
問合せ情報については大島社協災害VCで対応することを確認。明日以降の問合せ
対応についても、社協災害VCと役場で同一の対応をすることを確認。
・明日以降も、夕方に災害ボランティアセンター長および必要に応じて現場ス
タッフと福祉けんこう課長・係長と定期的に情報交換をすることが決定。
【避難所】
・避難者数33人。うち島外者3人。昨日に比べて、大集会室については若干、片
付いた印象がある。大集会室には食事スペースとして長机・椅子が設置されていた。
・食事は引き続き、地域婦人会が全島的なローテーション(被害の受けていない
地域を含め)で対応していることを確認。
【社協関係】
・18日正午に災害VC立ち上げを宣言。資機材調達班、ニーズ調査班に分かれて活
動。ニーズ調査班(2班)、施設訪問班で行動。
・物資調達については、活動資機材については手配済み。レスキューストック
ヤード、にいがた災害ボランティアネットワーク、JC(東京ブロック協議会)の
ご協力をいただいて確保。ただし、船便の積込状況により時間がかかることが判
明。同時並行で進めていた島内での資機材確保に数日間は頼らざるをえないこと
が判明。
・島内資機材確保については都立大島高校と都立海洋国際高校のご協力で少ない
ながらもスコップ等々活動資機材の調達が可能となった。島外からの物資・資機
材搬送については、今後時間がかかることを想定して対応していくことが重要と
なる。
・ニーズ調査については、被害の大きかった元町2丁目・3丁目のうち、2丁目
を中心にニーズ調査を実施。結果、8件からのニーズを確認。ニーズ内容は泥かき。
・昨日に引き続き都立大島高校の高校生たちが作業していたのでそこを中心に
ニーズ調査。数件の家の中でも空き家になっていたり、納屋・倉庫がわりに使っ
ている家屋もある(割合・数については把握できているわけではない)。地元の
建設会社の重やトラックが積極的に土砂除去に取り組んでいるが、有償か無償か
は未確認。
・取付道路が土砂が流れこむなど大きな被害を受けている。土砂を町道まで運ぶ
のが困難な箇所がある。
【福祉施設関係】
・被害の大きかった地域に近い施設訪問を訪問した。訪問施設は、藤倉学園(知
的障害者施設)、椿の里(特養)、黒潮作業所(精神障害者通所施設)。
・藤倉学園では一時的に停電・断水があったものの大きな被害はなし。16日の朝
食調理は、停電のため発電機で対応した。水については現在でもチョロチョロと
しか出ていない状況。学園の地域貢献として、炊き出しをしている婦人会や役場
職員にコーヒーやお茶を差し入れしたとのこと。
・椿の里でも大きな被害はなし。今後の状況によってはショートステイで入って
くる方がいる可能性も。その際、介護者も一緒にきてほしいと町役場に要望を出
している。職員の中には消防団の活動に従事している方もいるため、疲労が心配。
・黒潮作業所でも大きな被害はなく、通常の活動をしている。利用者を町役場の
バスで送迎していたが、それが使えなくなってバスが出せない状況。最大10人を
送迎していた。復旧のめどについては知らされていないため、バス停まで送って
いる。日常の活動としてパン作りをしているので、そこでボランティアに手伝っ
てもらうことがあるかもしれない。また東京に救急搬送された方がいたり、次の
台風が近づいていることなどで、利用者が精神的に動揺している。
【ボランティア希望者への対応】
・前日、役場にきたボランティア希望者(島内外)への折り返しの電話を役場と
災害VCとで、役割分担して実施。ほぼ連絡がつき、島外の方についてはフェイス
ブックを見ていただくことにし、島民および来島しているボランティアには12時
にボランティアセンターが設置されることをお伝えし、12時半に参集してもらっ
た。大島出身で東京にいる若者たち(20歳前後)が20人規模で来島しており、ボ
ランティアセンターを通じて活動している。
【現地の様子】
・何軒かは、この後の雨のことを心配している家がある。
・椿小学校の先生が生徒を連れて歩いていた(今日は集団下校)。
・鉄砲水が明日以降、出てくる可能性がある。そこは慎重に判断したい。
・島外の親戚が来島し、泥出し、家屋片付け等々を行っている。本人が立ち会え
ない場合の対応を考えていく必要がある。
・今日の午前中も大島高校が生徒100人、教員40人が自主的に活動を実施していた。
・現在、島に住んでいない親戚縁者がかなりの数来島している。ふるさとを心配
している方が多いことがうかがえる(この人達の力は大きなものになるだろう)。
【町の人の声】
・社協が対応してくれるのは、週明けでもありがたい。(いたるところで聞いた話)
・町役場は個人宅の泥出しはできないと言っているが、個人でできる量を超えて
いる。なんとかならないか。(70代男性)
・断水しているから家の中の拭き掃除が思うように捗らない。(30代女性)
・大島高校の生徒さんたちが頑張っていて、本当にありがたい。(60代男性)
・50年前にも水害はあったが、ここまでひどくなかった。(60代男性)
・うちの石垣が段下の家に崩れてしまわないか心配。(70代女性)