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減災に挑む30のストーリー
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10 大きなスケールで考える

災害前

状況situation

2004年10月20日、兵庫県北部を襲った台風23号の傷跡は甚大なものだった。人的被害、家屋被害はもちろん、倒木、林地・林道などの崩壊など森林にも大きな被害をもたらした。

円山川上流の朝来市などでは、台風23号による風倒木被害は、森林災害復旧事業の激甚災害に指定された。

事例case

台風23号のもたらした豪雨は、下流域の豊岡市では円山川の堤防決壊を引き起こし、市内に大水害を発生させた。

また、上流域の朝来町や出石町などでは台風による倒木が電線などのライフラインを断ち、山崩れによる倒木は土砂と共に道路をふさいだ。

また林地崩壊による流木などが川の流れをせき止め、川を氾濫させた。

1960年頃から用材として利用価値が高い針葉樹が大量に植えられたが、海外から安い木材に押されて、国産材は競争力を失い、間伐が行われずに放置された山が多くなった。間伐されない密集したスギやヒノキ林の根の張りは弱く、風に弱い。

被災地のある町長は「今回崩れたのは、植林した山ばかりで、数度の雨によって地盤がゆるんで木が流された。

風倒木がなければここまでの被害には至らなかっただろう。山を守る植林のあり方を考えなければ」と語る。

森林が、県土の約67%(全国14位)を占める兵庫県では、2002年(H14)より2011年(H23)まで「新ひょうごの森づくり」として人工林の整備(スギ・ヒノキの人工林の間伐を行い、間伐材を有効活用する。)・里山の再生(放置された里山林を整備し、レクレエーションや森林環境学習などの文化機能としての里山の活用)・森林ボランティア育成に取り組んでいる。

04年の台風23号による山林の被害を機に06年4月から新たに「災害に強い森づくり」にも取り組み始めた。

「県民緑税」を森づくりに活用し兵庫県内各地で森林の防災機能を高めるべく5年間で下記の四本柱で進めている。

  1. 緊急防災林整備(11,700ha。急斜面などの人工林を対象に、間伐木で土留めを設置)
  2. 針葉樹林と広葉樹林の混交林整備(1,000ha。針葉樹の人工林を部分伐採し、広葉樹を植樹し、多様な森づくりを進めることで水土保全機能を向上させる)
  3. 里山防災林整備(20,000ha。集落の裏山に土留めや歩道などを整備)
  4. 野生動物育成林整備(10,000ha。野生鳥獣の農作物被害などの多い地域に見通しのよい棲み分けゾーンの設置や奥地における広葉樹林の整備)

担当する兵庫県農林水産局豊かな森づくり室は、「地元の森林所有者や森林組合などと連携しながら民有林(個人、地域で所有など)を対象に県民の山を守っていきたい。森林の放置、荒廃は、森、川、海へとつながり、健全な森林の整備が洪水などの災害を防ぐ事につながる」と語る。

智恵wisdom

自然の引き起こす現象(台風、豪雨など)からいかに被害を減じていくか。

特に水害に関しては、河川の源である山、森の状態が流域の被害のありようを左右する。上流(山)の問題は、中流(川)から下流(海)へとつながっている。兵庫県は04年の台風報告を機に県民緑税(森林環境税と呼ぶ自治体もある)を導入して県民ひとりひとりが税を払う事で山に関心を持つ事、都会(街)の暮らしが山(田舎)とつながっている事を再認識させる。

それが安心、安全な暮らしを奪う災害を「防ぐ」、「減らす」事につながっていく。森林環境税を使った森林や里山の整備事業は、高知県に始まり、奈良、和歌山、岡山、鳥取など全国各地で行われている。

県民緑税‥‥06年度から5年間で実施。課税額は個人に年間800円が現行の県民税の1000円に上乗せされる。法人は資本金等の額に応じて二千円〜八万円。合計105億円の税収の見込み。