いのちをまもる智恵

減災に挑む30のストーリー
  • top > 
  • 11 そばにあるものを使う
地域名から智恵を探す »   
いのちをまもる智恵大募集!

いのちをまもる智恵ではみなさまの
智恵を大募集しています!

11 そばにあるものを使う

災害前

状況situation

4年10月20日、台風23号が室戸岬に上陸し、淡路島、神戸、京都など関西を経て福井、新潟など北陸へと駆け抜けた。

被害は、全国で死者・行方不明者約94人、負傷者486人という大災害となった。兵庫県北部の豊岡市や(旧)朝来市などの但馬地方でも多大な被害をもたらした。度重なる台風による水害の中で但馬(朝来)の人々は、自らで出来る水防の智恵を生み出した。

それは、彼らがその土地で生きていく術であった。

事例case

「竹流しをやろう」と太田延之さん(64)は言った。2004年10月20日夕刻、台風23号のもたらした激しい雨に円山川の水はあふれ、決壊するのも時間の問題だった。次第に水かさを増す激流が、幅約3mの石積みの堤防の石をはがし始め、土をもえぐり取ろうとしていた。

当時、朝来市石田地区の区長であった太田さんは決壊を恐れ、土嚢を堤防に積もうとしたが、消防団分庫には土嚢袋がなかった。

その時、太田さんの頭に子供の頃に見た「竹流し」の記憶が蘇った。

昔から水害に悩まされていた円山川流域の集落では、「竹流し」という方法で水の被害を軽減してきた。

近隣に生い茂る竹藪から竹を切り出し、枝葉の付いた竹の先に土嚢を縛りつけ、ロープで土手に打った杭で固定する。

そして土嚢のついた竹を川に流す。竹の枝葉に水の流れが緩められ、土手の土を削り取ることを防ぐ。

この土を削り取っていく現象を「先堀」という。そんな言葉も残るほどの「水との歴史」がここにはある。

太田さんの判断の下、約10人の消防団員が川沿いの竹を切り出し、「竹流し」を行った。

「今の若いもんは、竹流しなんか誰も知らん。」、「消防も昔はこの集落だけで40人くらいおったんや。」と語る太田さん。

現在、消防団は、この石田地区を含む5集落で50人しかいない。また、昔は今のようなナイロンの土嚢袋は当然ないのでどこの家庭にもあった「かます」というワラで編んだ米を入れる袋(当時、米を農協に納める際に用いた)に土を入れて土嚢にして「竹流し」をやったそうだ。

「生活の中にあるモノを緊急時にも使っていたんや。」「竹流しは、気休めなのかも知れんが…。」と太田さんはどこか昔を懐かしむように語った。

智恵wisdom

古来より水害に悩まされ続けてきた但馬地方。「竹」、「かます」などの日常の生活の中にあるものを使って「竹流し」という昔から伝わるやり方でわが地域を自分達で守る。減災の基本である。「竹流し」の効果について太田さんは「気休め」と言うが、日本各地の水防訓練に同じような「竹流し」、「木流し」が取り入れられている事を見ればその効果は想像できよう。

岐阜県大垣市(揖斐川流域)や京都府舞鶴市(由良川流域)、徳島県美馬郡(吉野川流域)などではすでに水防訓練、予防演習にこの「竹流し」を取り入れている。その他、水防対策としては、漏水した場所に土嚢を半月型に積み上げる「月の輪」工法やブルーシートを水際(川表)に掛けて透水を防ぐ「シート張り」工法などがある。