いのちをまもる智恵

減災に挑む30のストーリー
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15 歴史をたぐる

災害前

状況situation

だんじり祭りで有名な、大阪・岸和田に土生(はぶ)町という所がある。

【背景】町の中には自然の湧水や淵が多くあり、古くから生活用水や灌漑用水の為にため池、水路も多く造られてきたが、しばし決壊することもあったという。古代からの歴史や伝承の多く残るこの地では、「水」に関する伝説や祭りも多く、七夕伝説の天の川(阿間河滝)という地名が今も残る。

また地域間で水利をめぐる争いも絶えなかったというその反省から井堰祭りを興し、人々は「水」と共に暮らして来た。

事例case

土生神社(1090年創建)宮司の阪井健二さん(42)は、阪神・淡路大震災の際にボランティアとして仮設住宅で被災者ケアを行ってきた。

その経験を機に地域で人々と共に地元の事を見つめ直そうと思ったという。阪井さんの主催する「小さな友の会」、「郷土の歴史を学び伝承する会」の会場である土生神社の社務所に貼られている町内の大きな地図には歴史と伝説、先人の智恵がたくさん詰まっている。

万治3年(1660年)に決壊し、町内に被害をもたらした苦い経験のある孟正寺池の堤を人々は「普請」で地域住民自らが修復し、あるため池では敢えて大きな「かけや」を使わず、小槌で叩いて固めたという。ひとりひとりの小さな力と皆が助け合う事の大切さを教えている。「そろたよそろたよ ア ヤレコラショイ 掛けや打ちゃ そろた ヤレ 末の鏡を ア ヤレコラショイ ようそろたよ」と池普請唄にも人々の思いが残る。また「狐掘り」とよばれる素堀りで測量をせず、勘をたよりに数百m離れたため池とため池の間に用水路を掘ったという。そして熊野街道にあたる道の池の堤は、人々の往来によって踏み固められるような工夫がされている。

このように時に洪水を起こす可能性のある川やため池を治水して土地を開墾してきた先人たちの郷土への思いと智恵を阪井さん達は「土生町歴史散策マップ」という形にした。歴史を通じて地域を学び、関心を持つ事が「防災」につながると言う。

曲がった見通しの悪い道はどこか怖い。だからこそ昔からそこに祠を建て、神への畏敬の念を抱くような価値観も育まれてきた。

危ないから真っ直ぐに道を広げてしまうのでは…。と世の動きを憂う。

智恵wisdom

本来、地域の要になるべき寺や神社という「場」を使って(まさに寺子屋である)地域の人々が主体になってそこの歴史を学ぶ中から「歴史散策マップ」を作った。実は、これはハザードマップであり、過去の災害の中での智恵や危険エリアなどを自らが知り、共有する事でこれから起こりうる災害に備えて防災意識の喚起を促している。

「いのちの絆・歴史の絆・地域の絆」とう言葉をキーワードにして、人と自然、先人達の智恵や歴史、そして今を共に生きる地域の人々との「絆」を掘り起こし、考え直す事を教えてくれている。郷土学である。

普請(ふしん)‥‥禅用語で「普く(あまねく)人々に請う」という意味で道路、橋、城などの工事を多くの人々に呼びかけて行う。

かけや‥‥大型の木槌の事