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06 資源を発掘してつなげる

災害前

状況situation

記憶に新しい未曾有の被害をもたらした阪神淡路大震災。真冬の明け方5時46分、M7.3の地震が発生し、淡路島、神戸市などを中心に全半壊家屋約27万4000棟、焼失家屋約7500棟、避難者35万人、死者6434人という大惨事に発展した。

被害の大きかった長田区では、その後の街づくりの中で様々な復興の試みがなされている。

事例case

「神戸スイーツタクシー」と呼ばれるタクシーがお洒落な神戸の街を走る。タクシーに乗って観光コースをまわり、途中いくつかの有名洋菓子店でドライバーが店の特徴などを丁寧に説明し、その後、気に入った店で降ろしてくれる。

事前に予約しておくと自分の名前の入ったバースデーケーキも用意してくれる。これを仕掛けた近畿タクシー社長、森崎清登さん(54)は、震災後から復興の街づくりにかかわっている。

レトロな車体の「ロンドンタクシー」や宴会セットを積んだ「お花見タクシー」(観光)、「星空の車いすタクシー」は当日の夜間でも来てくれる。(介護)、子供達の塾への送迎には「安心かえる号」(子育て)、天然ガスを利用した「エコタクシー」(環境)、有名店の料理などを配達してくれる「出前タクシー」、「買い物らくちんバス」(暮らし)は2ヶ月限定で地域の人々と運転手の会話の弾む空間を作り出した。近畿タクシーは地域のニーズに見合うユニバーサルデザインを採り入れた多彩なサービスを展開してきた。

森崎さんは、タクシーは単なる移動手段ではなく、地域に密着した公共交通機関だと言う。周囲2kmの範囲内で地域密着型の客との顔の見える関係を築いていく。「あんたんとこ、頑張ってるね。」と町の一声で乗務員の背筋も伸びる。それを森崎さんは、「人の儲け」と表現する。地域に根ざす事でお金では計れない、従業員のやり甲斐や働く意欲などの会社にとって重要な「もうひとつの儲け」が得られるという。

生まれ育った長田の街が震災で焼け野原になった姿を見て「小さい頃の記憶、時間が消えてしまった。風景を失ってしまった。」と感じた森崎さんは、同時に「この町をもう一度創り直そう。」と思ったという。それから1年後のある日、被災地を去ろうとするボランティアの「このままいたら皆さんの手で街づくりが出来なくなる」という言葉をTVで耳にする。「そうや、自分らでやらなあかん!」と再び「街づくり」を決意する。

そして震災から5年後の「復興大バザール」で天然ガスのエコタクシーとロンドンタクシーを使って会場までのピストン送迎を行い、長田の商店街の街づくりに本格的にかかわるようになる。客のいなくなった長田の町を「観光の街」に!と考える。「見るものあるんか?!」「震災を売り物にするんか?!」という批判の声の中、森崎さんは「観光のポイントはあなた!見るものはあなた!」と商店主が語り部になり、震災からどうやって頑張ってきたかを修学旅行生に話してもらう社会学習を観光に盛り込んだ。目を輝かせ、時には目に涙を浮かべて必死で語る肉屋のおやじさんの姿に高校生は確実に何かを感じている。

そしていつのまにか元気になっている商店主、商店街。「ひとりひとりに暮らしや仕事の中で取り組んで来た復興がある」と森崎さんは語る。

その後、長田の名物を作ろうと「ぼっかけ」(牛スジの煮込み)を使った「ぼっかけカレーラーメン」や「長田ソース」などを地元企業と共同開発する。パッケージの似顔絵には森崎さん自ら登場する。

森崎さんは商店街の人間ではない。いわゆる「よそ者」である。だが、よそ者だからこそ言える事もある。よそ者だからこそ出来る事もある。商店街にある何気ないモノ、ありふれたモノの中から宝を見つけだし、それをうまくつないでいく。そしてタクシーという自分の持ち味を活かして周囲2kmで地域とつながっていく。

近畿タクシーは、これからも夢を乗せて「復興の街、長田」を走り続ける。

智恵wisdom

震災で焼け野原と化した長田の街。そこに新しいものを持ち込むのでなく、元々あるものや眠っているものを掘り起こして、うまくつなげていく。それぞれの持つものを活かして地域とつながっていく。

復興における街づくりの中で地元企業と地域とがいかにつながっていくか、いかに「もうひとつの儲け」を積み上げていくか。長田の街はそんな事を考えさせてくれる。