仮設住宅の風景(その1)
七ヶ浜町では、5月8日から仮設住宅への入居が始まっています。
ボランティアきずな館から歩いて5分程のところに建設された、第1スポーツ広場仮設住宅には、第1次募集、2次募集分の151世帯が入居しました。
入居から1週間程が経った時期に、入居者の方にお聞きしたお話です。「避難所よりは格段にいい。人に気を使わなくていいから。快適」「プライベートな空間が確保できて嬉しい。ようやくお化粧をする気になった」など、ホッと一息つけたというコメントもありましたが、大半の方は、暮らしの面ですでにいくつかの問題を抱えていました。
「私は足が悪い。玄関の間口やお風呂の段差が上がれない。浴槽が深いから、シャワーしか浴びられない」
「車が通れる道は舗装されているが、玄関先まで辿りつくには、じゃり道を通らなければならない。杖をついていると足を取られて怖い」
「お隣さんは違う地域の方。我が家は小さな子どもがいるので、走り回ったり、かべをたたいたり、大声を出したり、泣いたりして大きな音を立てると思う。隣に迷惑がかかると思うと不安」
「避難所を出て初めて一人の夜を過ごした。・・・淋しかったねぇ」
「アリが沢山台所に上がってくる。困った」
「室内が蒸し暑い。夏場は蒸し風呂状態だろうね」
「とにかく収納がない。介護が必要な高齢者がいるから、ベッドを2つ置いただけで部屋が一杯」
「車が無い人は一人で買い物には行けないね。ぐるりんこ(公的バス)もあるけど、自分の行きたい時間に便がないから、身内にまとめて買ってきてもらうしかない」
など。特に子どもや高齢者に関わる問題は、ささいなことが大きなストレスや事故に繋がるため、急務かつ深刻な課題であると感じます。
ある日、小さな子どもを持つお母さん数名とお話する機会がありました。その表情や言動を見ると、震災直後から大きな不安やストレスにさらされ、かなりの疲れを抱えていました。
最初に明るく振る舞っていたあるお母さんは、「この間ホームセンターで買い物をしたの。ある商品をみて、あ、これ、冷蔵庫の横に付けたら便利かも・・なんて思ったの。でも次の瞬間、『あぁ、もう私の家は無いんだった』って気付いた。全て一瞬にして失ってしまったから、こんな風になるのかな。私、自分の頭がおかしくなったと思った」とお話しながら、涙ぐみ始めました。すると、別のお母さんも「私も同じ経験をしてる。みんな一緒よ。私は子どものおもちゃも全部なくなっちゃった。だから今、無くしたおもちゃを取り戻してるの。以前持っていたものと同じものを少しずつ買い始めて・・」
私たちは、ソフト面、ハード面共に仮設住宅での暮らしを支えていけるよう、少しずつですが、改善のための取り組みを始めました。
○仮設住宅集会室の活用
七ヶ浜町災害ボランティアセンターと協力しながら、仮設住宅に設置された集会場でお茶を飲んでゆっくり過ごせる空間を作りました。最初は町の荷物置き場になっていたところに、テーブルとイスを置き、ボランティアきずな館で毎日実施している喫茶の機能を持ち込んだ形です。
運営は、地元ボランティア団体「友の会」とRSYのボラバスボランティアさんが一緒に行っています。1日20名ぐらいの方が利用され、学校帰りの子どももふらっと立ち寄ってくれるようになりました。ちょっとしたイベントなども十分できる広さですから、音楽会や写真展、フリーマーケットなどの企画も検討中です。
「家にこもりきりじゃ、気がおかしくなっちゃよ。とにかくここに来れば誰かいる。みんなで楽しくおしゃべりしてれば、あっという間に時間がたっちゃうね」という声も聞かれ、住民の皆さんにとって安心できる場になりつつあることを嬉しく思います。
しかし、一方で「他の地域の人たちの集まりには入りずらい」「少人数の場所でゆっくり珈琲を飲みたい」と、ボランティアきずな館の喫茶コーナーに足を運ぶ方もいます。意識的に複数の選択肢を作ることも、重要な支援のポイントであると改めて感じます。
○おまけ
今月11日、きずな館の前のグラウンドスペースに町の許可をもらい芝生敷きました。仮設住宅の建設で遊び場を失った子ども達の、新たなお楽しみスペースとして活用されつつあります。