岩手・宮城内陸地震[第5報]

皆様
栗田です。お世話になります。
引き続き現地派遣している浦野からレポートがあがりましたのでご報告いたします。
○本日(2008.6.17)の動き
・栗駒文字地区自主避難所でのヒヤリングへ同行・足湯(KOBE足湯隊)・環境整備など
○栗原市社会福祉協議会の対応
・社協スタッフによる花山地区の高齢者世帯個別訪問。(70歳以上対象・32名)
・ボランティア依頼表の作成、配布(一番大きな避難所での配布は行政の許可が下りず。)
・栗駒文字地区自主避難所でのヒヤリング調査
○被災者の声(栗駒文字地区自主避難所/避難者10名
・93歳になる義母と共に避難。妻は転倒したタンスの下敷きになり、怪我をして入院中。田んぼや畑の世話があるので、日中は家に帰り、夜に寝るために避難所に来るという生活。無農薬野菜にこだわってずっと野菜を作ってきた。この辺りで仙台はくさいを最初に作ったのも自分。でも跡継ぎはいない。畑ならいくらでも貸すから、興味があるのなら、やりにくるといい。これからトマトがいい季節。赤くなる7月ごろ、食べにおいで。でも、ここのところ震災のショックからか、夜はほとんど寝られていない。3日間風呂にも入っていない。近くの温泉に入っている人もいるが、入浴料が500円かかり自腹をきっている状態。当然無料にすべきだ。市は対応が後手にまわっていると感じる。最近この施設の管理者が、文字地区から自分のいるカドガサキ部落に移行。隣接するカキノキ部落の住民などは、遠慮して避難所に来ない。ここにいるのは、自分の集落の人たちだけなので、在宅で困っていないか気になる。食事はこれまで2回弁当が出たが、それ以外はおにぎりとインスタント味噌汁。炊き出しでもやってくれたらいいのに。そろそろ変わったものも食べたいと思うが。みんな高齢者ばかりなので、調理室があり、ガスが使えても、料理はできないから。昭和一桁前に生まれた人たちは、食べられるだけでありがいと思うし、何でもおいしいと言う。
(77歳・男性)※入浴については、18日以降、自衛隊が入浴サービスを行う予定。


・孫の嫁が体調の悪化などを心配し、家においでと言ってくれている。孫の家は自宅から1時間程かかる。一番安心できる場所と考えると、孫の家に行きたいという思いがある。しかし、婿より「一人で暮らしの○○さんがさびしがるから、もうしばらくここにいれないか」と言われた。(お婿さんとしては、孫の家に行っても、みんな働きに出て一人になるので、余計にさびしく、気を使うのではないかという懸念あり)婿は一家の主だし、地域の付き合いを大切にしようと考えれば、やはりもう少し避難所にいた方がよいと考え、断った。普段はさ・わ・や・か(さ:さっぱりと、わ:若々しく、や:やさしい気持ちで、か:家族に好かれる)高齢者になろうと努力している。お通じはあり。以前動脈瘤の手術を受け、その場所が最近またうずいている。でも頑張れる。(93歳・女性)
・88年生きてきた中で、こんな地震ははじめて。地震があったとき、北海道や埼玉にいる子供から電話がかかってきて、話すことができた。でもこちらから電話をかけることはできなかった。余震が4回きた。それで眠れないときもある。93歳のおばあちゃんと仲良し。地震が発生してからここに4日間いる。6人の子供がいるが、現在娘とその婿と3人暮らしをしている。実の娘なので、やっぱり気が楽だ。家の中では、炊事をしたりしている。食べ物・飲み物は差し入れがたくさんあるので、困らない。
でも、水が一番困る。昨日、温泉に行った。体や口の中がネバネバしていたけど、すっきりした。腰が悪いため足も冷えるので、冬用の足袋(靴下)を履いている。下は2枚履きしている。それでも足の先が冷たい。また、トイレに行くときは、杖をついて行っている。今まで農家として働いてきたが、腰のこともあり、娘がやっている。玄関には、緑の紙が貼ってあった。でも、家の中はガラスが割れたり棚が倒れて、その中に大事にしまってあった5枚の皿が割れてしまった。それが散乱している部屋があるので、家族には入らないように言われている。(80代・女性)
・少し血圧が高くなっている。心臓が悪く、医者からは水分制限をされている。1日必ず、血圧・水分量・体重・脈拍を測り、ノートにつけるように先生に言われている。夜はゆっくり眠れない。普段着のままで寝るので、やっぱりゆっくりとできない。(80代・女性)
・足湯は本当によかった。いつも足がだるいと感じていたが、びっくりするほど軽くなった。孫みたいな子達と話をしてもらって、とっても楽しく過ごさせてもらった。
またやってほしい。
○今後心配されること
・トイレと居室(清掃・空気の入れ替え・ごみの分別など)の衛生管理。
・互いの仲がよいが故の気兼ね。ストレス(一人になりたい・・・)
・健康状態の悪化(不眠・食事の問題)。
・避難している世話役的な方の負担。
・個別の実態把握、(ケースシート?)などの作成
・気分転換
○岩手県における障がい者の状況(NPO愛知ねっとスタッフ南里さんからの情報提供)
[NPO愛知ネットとつながりのある団体から紹介して頂いた、岩手・手をつなぐ育成会のNさんの話]
・Nさんは、岩手県障害者110番、手をつなぐ育成会に関わっており、日常から相談支援専門員(障害者支援のために置かれている行政職員?)と連携がある。
・相談支援専門員が、一関・奥州市の障がい者関連施設等に連絡をとったところ、ガラスの破損程度で人的被害は無かったことが確認された。
・Nさんのお子さんは知的障がい者。2003年の宮城県北部連続地震で、揺れに驚きパニックになったことを教訓として、日常から防災訓練をするようになった。今回の地震では、いわれなくても部屋の扉をあけ、避難経路を確保していた。日ごろの成果が出た。事前の訓練や意識付けなど、日常からの取り組みがやはりとても重要だと思う。
○浦野所感
・自主避難所・小規模ということで、保健師は定期的に来ているようだが、常駐はしていないので行政対応は他と比べて手薄。
・ほとんどが、75歳以上の方々で、今は気丈に振舞っているが今後数日の間で体調不良を訴える方が出てくる懸念あり。この時期の、「自分は大丈夫、もっとがんばれる。他人が入ってくると余計に気兼ねするから、自分たちのペースで助け合いながらやっていける。」という言葉。それをこちらが、真に受け、消極的な対応をすれば、手遅れになる可能性が出てくる。
90歳のお年寄りにとってみれば、家と違う場所にいることだけでも相当な負担だ。また、被災者の声からもすでに体の不調を訴える方、予兆のみえる方もいる。自分たちの目からみえることだけで判断しようとしたり、相手の意向を聞きながら物事を進めることにこだわりすぎると、介入のタイミングを逃し、本当に手遅れになる。
だから、その場で決断して、その場で何気なく解決できるような雰囲気づくりや瞬発力が求められる。支援体制について、まずは全体の方針を決めることも重要かもしれないが、例えば、コップがなく発砲スチロールのおわんで牛乳を飲んでいる、その状況にいち早く気づき、すぐに解決しようと動く感性を持つことの方が大事だと私は感じる。そこに、信頼と安心が生まれる。被災者支援は、このようなことの積み重ねでしかないのではないか。しかしまだ状態の変化がはっきり見えていない中で、この重要性を理解してもらうことの難しさを今、痛感している。