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お世話になっております。スタッフの関口です。
本年度のRSY事業「防災の森づくり 川づくり」第1回シンポジウムを6月27日(日)、名古屋市中区栄で開催いたしました。近年の水害の被害を拡大させる要因が、河川の問題だけでなく上流の森の荒廃にもあると言われていることから、山と川の関係を防災の視点から見直してみようという新しい試みの一つです。
事業を企画するきっかけとなった昨年夏の兵庫県佐用町の水害被災地で、「炭」をつかった復興プロジェクトに取り組む神戸市の被災地NGO恊働センター代表、村井雅清さんにプロジェクトの成果などを報告していただきました。人口約2万人の山あいの佐用町では、かつて竹炭生産が産業として成り立っていましたが、現在は需要がなくなり、炭づくりも途絶えていました。それと同時に山の手入れがされなくなり、水害後も土砂崩れや流木を発生させた山林の多くは放置されたままだそうです。
復興とまちおこしを兼ね、炭づくりを復活させようと15年間使っていなかった炭焼き窯に再び火を入れ、大阪の大学生たちが佐用の炭の商品化に乗り出すなど、「考えられない現象」が起こり始めているという報告がありました。
続いて、岐阜大学応用生物科学部教授の木村正信さんに、科学者の目から森林と防災の関係について解説していただきました。健康な森は土壌がスポンジのように水を吸収し、保水機能を発揮します。そして森の木は土壌に根を伸ばし、地盤を安定させます。ただし、これらが必ずしも洪水や土砂崩れの防止に役立っているとは言えず、むしろ森の保水能力を超える大雨や、木が根こそぎ流されてしまう土砂崩れが問題となっているという、非常に冷静な視点を提供されました。
そして岐阜県本巣市に本社を構える(株)井納木材社長の井納英昭さんには、里山の雑木を束ねる「粗朶(そだ)」を使って河川の基礎工事を行う「粗朶沈床工」の歴史と実例について話していただきました。万葉集の時代から使われていたという粗朶は、明治時代にオランダ人技師デ・レーケによって河川工事に使われ、伊勢湾台風の堤防復旧にも用いられたそうです。しかし近年は護岸整備がコンクリートにとってかわり、農閑期に粗朶づくりをする農家もいなくなってしまいました。こうした山と川を結ぶサイクルが途切れてしまうことが自然のしっぺ返しとして表れてきているのかもしれません。井納さんは「病は気からと言いますが、川の病は”木”から、です」と言われました。
後半のシンポジウムでは代表理事・栗田の司会でこの3人が討論。村井さんは「中越地震や能登半島地震の被災地で家屋被害が少なかったのは、しなやかな木で頑丈な家を建てていたから。昔の知恵を守る”もう一つの社会づくり”を減災の取り組みに導入したい」と提言。木村さんは「温暖化の危機はすでに表れているが、異常気象イコール災害ではない。災害は乱開発をはじめとする人間の行為が関係している。明らかな社会現象だ」と厳しく指摘されました。
会場には佐用町の被害の様子を映した写真パネルや、粗朶沈床工の模型などを展示し、理解を深めてもらいました。
こうした山と川の関係を実際の現場から考えてみようと、本事業では井納さんたちの案内で岐阜の森を見学し、粗朶づくりを体験する講習会を開きます。まずは7月10日(土)に岐阜県揖斐川町の里山を見学します。10:00に貸し切りバスで名古屋を出発し、17:00までに名古屋に戻ってくるツアーです。
参加ご希望のかたはお名前とご住所(市区町村まで)、ご連絡先をご記入のうえ、メール(info@rsy-nagoya.com)かファクス(052-253-7552)でお申し込みください。レスキューストックヤード会員以外のかたは参加費1000円を当日お支払いください。
どうぞよろしくお願いいたします。