RSY・令和3年8月豪雨水害への対応について(第9報)

みなさま
いつもお世話になっております。RSY事務局です。
RSYは8月27日より、8月11日からの大雨で被災した佐賀県武雄市を中心に支援活動を継続しています。RSYが当初から支援を受け入れて頂いている「一般社団法人おもやいボランティアセンター」は、カビや寒さ対策などの家屋保全に関する作業支援、修繕や支援制度、生活全般に関する相談窓口、お弁当や総菜、生活物資等の提供、地域巡回型サロンの企画・運営、子どもの遊び場を通じた親子支援など、多岐にわたる支援プログラムを展開し、日々、被災された方々の命と暮らしに向き合っています。

水害から2か月半が経ち、現地も朝晩すっかり冷え込むようになりました。季節が変わったことで、衣類や電化製品も冬支度が必要になります。おもやいでの活動を通じて、私たち出会った住民の皆さんからは、

「せっかく気にいったものを買っても、また次も被災するかも知れないかと思うと、もう間に合わせのものでいいやって思ってしまうの」

「うちの壁はベニヤのままでいい。高い金払ってせっかく直しても、結局は水に浸かる。周りからは『ベニヤの家は金がない』って思われるかも知れないけど、もういいんだ。次も被災するってことを前提に直していくしかない」

「私たちの家に大工さんが入って、住めるようになるのは多分春頃ね。2階はぐちゃぐちゃ。慌てて運んだから何がどこにあるかさえ分からない。もうその光景を見るのもいや」などの声が聞かれています。
本来、床や壁、家電や家具など、生活空間やインテリアを整えることは、健康を守り、暮らしに彩を添え、心を豊かにする作業。一日、一日の生活を丁寧に積み上げていく時間の中で、日々の暮らしに愛着が生まれ、心が落ち着き、沢山の想い出と共に、安心して過ごせる空間へと変化していく過程があります。
しかし、今回の2度目の水害は、そんな暮らしを取り戻そうと踏ん張る力を、あからさまに削ぎ落していく状況がありました。活動中何度もお聞きした『情けなか』という言葉からは、「今まで私は何のためにあんなに頑張ってきたんだろう」と、これまでの自分をも否定するような響きを感じました。

さらに、「もう期待しない」「あきらめる」「家が傷つくことを前提に考える」という言葉。それは、これ以上自分の心が折れないようにと、自分自身を守るための、精一杯の心の持ち方を表していたのかも知れません。一方で、支援の最中に畑で出会った女性が「水害にあってから初めてお味噌汁を自分でつくったの!まな板とか買ってきて。今日畳も入って、ようやくそんな気になれた。だからね、すごく嬉しい。」と声を弾ませてお話されました。

一杯の味噌汁を自分で作ったという事実が、こんなにも喜びや活力、充実感を生み出す力があるということを、改めて教えて頂いた出来事でした。

また、建築士さんへの相談やサロンでの様々な人の関わりを通じて、少しずつ不安や問題が解消され、ホッと一息ついたり、一歩進んだという実感を持たれる方も大勢います。

おもやいでの活動を通じて、改めて、ひとりにつながる人の関わりと支援のパイプを、どれだけ工夫して増やしていけるか。そのための選択肢をできるだけ用意し、ご本人の意思で選べるように整え、支えていくことが、本当の意味での自立支援なのではないかと考えました。

決して、「被災者なのだから」と、粗末な寝床や粗末な食事で我慢し続けることが自立なのではないということです。
RSYは、おもやいをはじめとした、佐賀の支援者の皆さんのこの実践を学び、応援し続けていきたいと思います。

★私たちは、佐賀災害支援プラットフォーム(SPF)が提示している
県外支援者のガイドラインに従って現地入りしています。
佐賀災害支援プラットフォーム(SPF)のHP
https://peraichi.com/landing_pages/view/spf20180901/

★この取り組みは、日本財団助成金「令和3年8月豪雨」からのご支援を頂き実施しています。

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RSYの活動
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★看護師・おもやい運営ボランティア派遣【終了】
8月27日~10月17日までに、17名(のべ約150日)のボランティアを派遣し、要配慮者世帯の個別訪問や、食料・物資、作業支援ボランティアのお手伝いをさせて頂きました。名古屋からの帯派遣は、10月17日をもって終了ました。

★食料支援【継続】
家の感想や、カビ対策、修繕の遅れにより、いまだに十分な調理環境が整わない方や、日々の疲れの蓄積で料理に気持ちがどうしても向かないという方が数多くいます。既に、ビタミン・ミネラル・食物繊維・タンパク質の接種につながるレトルト食品や長期保存の効く食材の提供は行ってきましたが、少しずつ自力調理に向けて支援内容を展開していけるよう、引き続きサポートしていきます。

★久津具地区でのサロン活動サポート【継続】
地区の9割が被災した久津具地区には、地域で小規模の宅幼宅老所、デイサービス、有料老人ホームを営んでいる「NPO法人みつわ」さんがあります。10月から来年3月まで、月1回この地域に通い、おもやいと共に、サロン活動をお手伝いすることになりました。RSYは、駄菓子屋コーナーや名古屋の風を感じるお楽しみブースを出展予定。また、2016年熊本地震で支援させて頂いた御船町からも「元気が出るあったかい汁もの」を作りに来てくださるというお声も頂いています。

10月24日(日)13:00~16:00に開催されたサロンには、RSYから2名のボランティアが参加しました。地域の方々約30名が参加。RSYは駄菓子コーナーと名古屋が誇るB級グルメ「たません」を提供し、「初めて食べた!」「おいしくてサイコー!」と大好評でした。ちなみに駄菓子はレジに行くと半額になるという特典付き。子どもたちも喜んでくれました。

★令和3年8月豪雨水害支援・RSY中間報告会【終了】
10月6日(水)19:00~20:30、RSYのこれまでの活動について、派遣されたボランティアさんによる報告会を開催し、約40名の方々がご参加くださいました。登壇者は、おもやいに派遣されたRSYボランティアさん3名。名古屋の防災ボランティアさん、看護師さん、学生さんそれぞれの視点から、武雄での経験を共有し、継続的な支援の必要性をお話下さいました。

【参加者の感想】
・SPFの仕組み、コロナ対策のいい見本になると思う。
・おもやいが2年前から継続して支援をしていたからこそできた、丁寧な取り組みだったということがよく分かった。
・レトルトやカップ麺など、送る側が送りやすいものになりがちなのは気をつけないといけないと思った。
・90代は、経済的にも気持ち的にも引っ越しできない。若い世代は、手放すことを考えている。それぞれサポートするべき内容が違うのだということが分かった。
・県外から来ているボランティアだと伝えお話すると「ご近所さんには話せいがもうここに住めないと感じている」といったこの地域の人じゃないから話せるといった話が聞かれた。子どもについても親の大変な様子を見ているせいか、中々言いたいことや気持ちを表現するのをためらわれている様子あった。自分らしさを発散できる場必要だと感じた。

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RSYから派遣したボランティアさんの感想
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★秋田有加里さん

(愛知淑徳大学コミュニティ・コラボレーションセンター(CCC))
2021年9月16日~20日の短い期間でしたが入らせていただきました。物資支援の受け取りでの受付やご自宅訪問の中で高齢のご夫婦に出会いました。90歳、89歳と長く連れ添われたご夫婦は2度の災害にあったとしてもこの地で過ごすしかありません。大切にしてきた我が家の床は剥がれ、多くのものは水に浸かっています。食事ものどを通らず、過ぎる日々を何とか送ってみえる状態でした。そんな中でも3日目に泥だらけの皿を洗わせていただいている際、近所の方が様子を見にみえていました。「どなんしちょっとよ~。」この、ご近所さんの声かけが、どれだけお2人の心の支えになっていることでしょう。愛知ではなくなってしまった‛つながり‘がここには存在している。災害が起こって、復興していくときに1番必要なものが身に染みて分かりました。★菊池遼(日本福祉大学教員)
私が武雄に入ったのは災害発生から3週間ほど経ってからでした。おもやいボランティアセンターで物資支援をしつつ、いらっしゃった方のお話を伺っていましたが、毎日来る人もいれば「初めて来ました」という方も毎日数名いらしていました。どこでおもやいボランティアセンターをご存知になったのかを聞くと、大概はお知り合い伝手に知ったという方がほとんどでした。もし、情報を伝えてくれる人が近くにいなければ、我慢した生活を続けている人が今もどこかにいるのではないかという気持ちにもなりました。そして、「初めて来ました」という方も、2年前の災害ではおもやいボランティアセンターに繋がっておらず、今回の災害でも3週間経ってようやく支援の手が繋がったということでもあります。「受援力」という言葉も東日本大震災以降によく耳にするようになりましたが、災害時には情報を手に入れることがいかに大切かを改めて感じた活動でした。★後藤凛(日本福祉大学学生)
今回、佐賀県武雄市で活動するにあたって、学生で今まで被災地でのボランティアを本格的にやったことない私が活動に参加していいのだろうか?役に立つことができるのだろうか?とすごい不安でした。実際4日間活動に参加して、確かに地域の方からと関わる中でどんなニーズがあり、どう対応していくべきかというのを自分自身で考えることは私にはまだ出来ませんでしたが、先輩方の動き方、地域の方との関わり方を学生の時に近くで見て学ぶことができたのはこれからに生きていくのではないかと思いました。今回活動をして、被災した地域について「知る」ということがとても大切だと感じました。まだ私には広い視野を持って行動をすることは未熟ですが、今回の貴重な経験を今後にも活かしていけたらと思います。★池口真美(RSY個人会員)
9月22〜25日、主におもやいの支援物資担当として活動。奥の保管庫がかなり雑然としていたためその整理と食料など取りにいらっしゃる方の対応。床下の泥出し経験はあったが、そもそもこういった内容のボランティアは初めて。被災者の方とどう接すればいいのかも分からず、最初にお邪魔した老夫婦の奥様が肩を落として泣かれる姿にただ背中をさすることしかできなかった無力さ。
物資支給でも消費期限が近いものが大量にあるのに、たくさん持っていかれる方の行動に目を光らせ数を制限する理不尽さ。きっと困っているから持っていくのだし、近所の方にお渡しするのかもしれない。お互い様精神で他の人の分も残しといてあげてというのもわからなくないが、正直もやもや感が残った。

引っ越して2ヶ月で浸水した若いお母さんの話。「以前もここは浸かったというのは百も承知。でも小学校に上がる子どものことを考えて、1年以上も悩んで移り住んだ。もしもに備えて2階に色々運んであったけどダメだった。どかーんと水が押し寄せるというよりじわじわだったので、幸いにも子どもの心的ストレスにはなっていない。一日中歌をうたったりしてなるべく楽しく過ごそうとしたけどもうダメだと思って救助してもらった」。老夫婦にしても移り住んだ若い家族にしてもそれぞれそこを離れられない理由があることを知りました。

★根岸恵子(こどもNPO)
この度、初めて災害後の現場に入りました。物資調達要員として派遣されましたが、直接、現場で生の声を聴かせていただく機会をいただきました。特に印象的なのは、被災者の方の落胆とあきらめの声です。地形も起因のひとつになる水害は、気候変動に伴い、同じ地に起こる頻度が高まることが予想されます。地元の方からは度重なる水害被害の経験から、「もうこの地に住むことはあきらめようと思っている」「がっかりしていたが、高校生の子たちが訪問してきてくれて、そういうつながりがあると、ここにとどまる気持ちもまた出てくるけど、、やっぱりきびしいなあ」「親族から移住を考えろと言われている」「前に家なおしたのに、またこれだよ。もうお金使い果たしたよ」など。

一方で気になっているのは、子どもたちの声が拾いづらいこと。お手伝いベースでお家の方と来ることが多いのですが、大人の大変さを目の当たりにして、自分の率直な思いを表現することに臆する様子や雰囲気を感じました。地元の支援者の取り組みや、しくみづくりについても、お話を聴かせていただく機会がありました。地元に根差して、継続的に関係づくりやつながりを生み出すキーパーソンの存在の重要さを改めて感じ、実践事例として、大変学びになりました。学んだ事例から自分の地元でも平時からできることからやっていきたいと思います。

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