令和元年東日本台風(台風19号)から3年~長野市豊野区住民の声~

みなさま
お世話になります。RSY事務局です。
2019年10月13日、千曲川の堤防が決壊し、甚大な被害をもたらした台風19号
の発生から、昨日で丸3年が経ちました。
RSYは、当初、千曲川の支流・浅川の越水で、2m以上の浸水被害を受けた、長
野市豊野区に活動拠点を置き、自主避難所の運営や炊き出しの提供を行ってき
ました。その後も、地元の皆さんと共に、地域支援拠点「まちの縁側ぬくぬく
亭」の立ち上や、自主避難所から応急仮設・みなし仮設に転居された方々の訪
問活動に関わり、現在も交流を続けています。
ここでお世話になった長野の皆さんは、私たちと共に、佐賀県武雄市や石川県
小松市にも足を運び、被災者同士の学びと交流の機会にお力添えを頂くと共
に、被災された方々の痛みに向き合い、温かく励まし続けて下さっています。
現在、長野市災害ボランティア委員会は、「ぬくぬく珈琲」を開発・販売中。
売り上げの一部は、令和3年8月豪雨水害で被災した、佐賀県武雄市久津具地区
で、地域支援拠点「地域共生カフェ笑美屋」を運営する、NPO法人みつわに寄
付されます。全国各地から購入できますので、添付のチラシをご覧の上、ぜひ
ご協力ください。RSYスタッフ一押しの、本当においしい珈琲です!
そして私たちは、これらの活動を通じて、被災された方々の生活の変化や心情
に触れる機会を数多く頂きました。以下は、水害から3年を迎えた住民の方の
生の声です。暮らしの変化に翻弄されながらも、ご自身なりの折り合いを付け
ながら、懸命に日々を積み重ねてきた、それぞれの「今」に、少しでも触れて
頂ければと思います。
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70代・男性
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あれから3年が経ったけど、水害前と比べると空き地が多くなったなぁ。持ち
主の経済的事情が大きいよね。中には解体業者の廃棄物の集積所として使われ
ているところもあってさ。昔の風景と比べるとやっぱり変わってしまったと思
う。豊野区は、浅川沿いで一番低い土地にある地域。昨年、一昨年の大雨で川
が溢れそうになって、ギリギリ難を逃れたんだ。抜本的な治水対策が取られな
ければ、住民は安心して住めないよ。水害後の健康面でのダメージをそのまま
引きずってる人もいる。コロナの影響も重なって、以前のような地域の活気が
戻ってこないんだよね。それは見た目には分からないだろうけど、本当の復興
まではまだ時間がかかると感じているよ。
でも、地域の女性たちやボランティアの皆さんが、ぬくぬく亭の運営や、災害
公営住宅に住む人達への見守りなど、積極的にやっている。福祉のまちづくり
に向けて、とても心強い存在だと感じてるよ。
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80代・女性
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水害の後、すぐにボランティアさんが助けてくれて、そのおかげで、今ほぼ前
と同じ暮らしに戻れたと感じています。私のところはね、この通りで一番最初
にリフォームが終わったの。早く治って心底ほっとした。しばらくは親戚の家
にお世話になっていたけど、気を使って1日いられなかったのね。だから毎日
水が浸からなかった2階に戻って、一人で心を落ち着かせてた。そんな時で
も、ボランティアの人が声をかけてくれてね。あの時もらった名刺は、今も大
事にとってあって、時々寂しくなると眺めてる。ボランティアさんのことを忘
れたことはないです。
身体の方はね、泥を出した時に痛めた腰が完全に治らなくてうまく歩くことが
できないの。でも、ずっと続けてきた三味線のお稽古には行っているのよ。11
月に発表会があるの。水害後初めての参加。とても楽しみ。頑張ってきます。
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80代・男性
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実はさ、今日葬儀屋に行ってきたんだ。ひとり暮らしだし、兄弟は近くにいる
けど、そんなに頼っちゃ申し訳ないだろ?俺に何かあった時、周りに迷惑をか
けないようにと思って、どんなもんか行ってみたのさ。水害から1~2年の頃が
一番きつかったね。家や土地、これから住む場所をどうしようかと考えれば考
えるほど途方に暮れて。頭が痛くなっちまう程悩んだ。結局豊野から大分離れ
たみなし仮設に入ったけど(現在仮設住宅は全て解消・そのまま契約継続して
居住中)、豊野に戻ってまた家を建てたいって気持ちもあってね。銀行にも相
談に行ったし、どうしても諦められなかったんだ。
もう81歳。新築しても、あと何年住めるのかって。そう考えると、ここでスト
レス抱えているよりも、気持ちを切り替えて、これからの人生を楽しむことに
時間を使った方いいと思ったんだ。3年経った今、ようやくここでの生活も落
ち着いてきた。近所の人や福祉の人もよく様子を見に来てくれるし、買い物や
病院も不便なく生活できてる。可能な限りここに住んで、どうにもならなくな
ったら施設に入り、最後は葬儀屋のお世話になる。そんな見通しが持てたら、
変に落ち着いちゃって、すごく気持ちが楽になったんだ。
この間自主避難所で一緒だった人が電話をくれて、「今度一緒に釣りにでもい
こうや」って誘ってくれた。こうやって気にかけてくれる人もいるんだもの。
小さな楽しみを重ねながら、穏やかに過ごしていきたいなって思っているよ。
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70代・女性
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今日は、水害から3年ということで、集いの会が催されたので参加しました。
もう3年なのか・・・まだ3年なのか・・・。被災前と変わったものを私なりに
挙げるとすると、「環境」「人の気持ち」「人の関係」「経済」「景色」かな
って思う。努力はするけど、これらが戻ることはないんだなぁって。だからこ
そ、新しく作る努力をしてもいいかなって思うんです。
リフォームで何百万円という借金を背負った人や、地価が暴落して経済的にも
厳しい状況の人もいる。災害公営住宅は高齢者や困窮世帯が多いので、身近
に生活を支える誰かがいなければ、立ち行かない人もいる。やむを得ず地区か
ら去った人の中には、「故郷を捨てたと思われているんじゃないか」という後
ろめたさで気軽に立ち寄れなくなった人もいて。見えない壁ができちゃったん
だよね。「そんなことないよ、いつでも戻ってきていいんだよ」って言ってる
んだけど気兼ねしちゃってね。だから、花壇や農園を作ったり、ぬくぬく亭の
運営にも力を入れてきたの。この壁を突破するきっかけになればと思って。他
にいい方法があるなら、他の地域の事例をもっと学びたいと思う。
私は、治水対策も重要な課題だと分かっているけど、それ以上に、水害がきっ
かけで、人のつながりが切れて孤独化していくことが一番の問題だと思って
る。だから、心配な人の所には、地域支え合いセンターの方と訪問したり、個
人的にも度々おかずを持っていったりしているの。今やっている地域活動も、
「孤立を防ぐ」っていうその一点のみ。様々な活動の場を通じて、色んな人の
目が交わることで、それができるんじゃないかって思うの。
地域支え合いセンターは1年延長されたけど、その後はどうなるかはっきりし
ていない。せっかくつながった人の関わりや信頼関係を、次はだれが引きつい
でいくのか、みんなで考えなければと思います。