能登半島地震【第27報】

皆様
栗田です。お疲れ様です。昨日より穴水町災害対策ボランティア現地本部で活動しております。同行の吉田護さんのレポートと合わせてお知らせいたします。(2007.4.26縲鰀27現在)
■仮設住宅説明会(4月26日午前・午後の2回開催)
・前半部分は行政による電気、上・下水道、転居・転出届け、ごみ、電話等に関する事務的な説明、後半部分は中越地震被災者で「いきいき田麦山」を代表して渡辺さんによる仮設住宅の説明があった。田麦山からは合計8名のメンバーが来られ、同じ境遇を歩んだ者として、「協力したい」という気持ちと「少しでも不安を取り除いてあげたい」とのお申し出により実現した。
・渡辺さんのお話:仮設住宅経験者ならではの視点で、写真等が満載のPPTを使って、懇切丁寧に説明された。開口一番「心の切り替えが大事だ」、そして最後は「住めば都」と、私たちでは到底口にできない内容で、一言一言が貴重なアドバイスとなった。聞かれた方の中には涙ぐんでお礼を述べられた方もいた。
 ・仮設住宅は避難所暮らしで失われがちだった家族との時間を取り戻す場
 ・そして、コミュニティ再開の場
 ・一時的な仮住まいの場で、マンションやアパートのような完璧な住まいではない
 ・限られたスペースなので、まずは生活空間の確保を
 ・家財は、最初は最小限に。その後徐々に増やしていけばいい。家電は一通り必要
 ・夏は暑く、冬は寒い。熱気・湿気・結露の発生は避けられない
 ・夏場は必要以上に料理しない。食べきる。冷蔵庫も過信は禁物。食中毒が心配
 ・夏季(梅雨時)の湿気対策→エアコン、除湿機、乾燥剤の活用
 ・高齢者・子供の脱水症防止→水分補給と換気
 ・冬季の防寒対策・結露防止
  1)暖房器具の選択→エアコン、給排気式ファンヒーター
  2)支柱(鉄骨)の被覆
 ・仮設住宅での自治形態の確立
  1)連絡網の確立→班長・連絡長選任等
  2)集会施設の管理→掃除(当番制)
 ・個々の生活環境づくりと気遣い(モラル)
  1)長屋住まい→集い・助け合い
  2)ゴミ処理→個々のモラル
 ・空間の有効利用(室内の上に空間あり!→棚の設置で小物を収納)
 ・仮設住宅内では携帯電話の電波が入りにくい→室内アンテナの設置
 ・経験者としての教訓のポイント
  「地域愛」「自分達だけで頑張ろうとしない」「気持ちの切り替え(地域全体で)」
説明会終了後、ボランティア本部からから引越しボランティアの希望を募る用紙が配布された。また前日までに用意された「引越し応援パック」が希望者に配布された。
□栗田の所感
説明会だから仕方がないが、前半の説明はやはり行政らしい細部にわたる丁寧な説明も、抑揚のなさが気になった。入居予定者はきっと不安でいっぱいなのだろう、要は通常の転居と同じ簡単な書類や手続きにもかかわらず、しきりに質問が飛び交っていた。そのムードを田麦山の渡辺さんの実体験が緩和させ、さらに地元ボラ連らが準備した「応援パック」が手渡される頃には笑顔ももれていた。行政とボランティアの連携で無味乾燥な説明会にさせなかった成果は大きいと感じた。


■まちの復興
今回の訪問は、仮設住宅対応のほかにもう一つの目的があった。それは「町の活性化」に向けた支援への模索である(詳細は追ってお知らせします)。吉田さんのゼミ教員・多々納京大防災研教授(防災経済学)同行のもと、副町長、産業建設課ご担当職員、商工会事務局長、能登ワイナリー常務理事などと矢継ぎ早にお会いした。これまでは地震による被害ばかりに目線がいっていたが、さわやかな春の日差しにきらきらと映える美しい海、旬の山菜が生い茂る青々とした山々の見事なこと。穴水はこんなにも魅力あふれ、素敵なまちだったのだと、遅ればせながらはじめての感覚に浸った。
・能登の活性化事業で平成13年より穴水に「ブドウ畑」が整備され、昨秋の収穫分から、なんと「能登ワイン」が新たな名物として商品化されていた。副町長はワインを復興のシンボルにしたいと鼻息が荒い。試飲したが、さらさらしていて飲みやすい。北海道ワイン出身の「能登ワイナリー」常務理事は、「昨年の 12月から販売を開始し、本格的なワイン作りと珍しさも手伝って、順調な売れ行きだった。しかし地震後、注文はこれまでの1/10に落ち込み、あせった。出鼻をくじかれたが、少しずつだけど注文が戻りつつある。課題は将来的にも安定した需要が続くかどうか…」とのこと。
・町の中心に位置する商店街は、ご他聞に漏れず郊外の大型店の進出やこれまで幾度も重ねてきた活性化事業にも頓挫、さらに今回の地震が追い討ちをかけて、本当に苦しい状態。石川県が打ち出した商店街復興支援策も、補助事業なので原資を工面できるかどうか。後継者不足や中心メンバーの高齢化も深刻。しかし「何とかしなければいけない」ことだけはわかっている。かき、くちこ、このわた、なまこ、碁笥、カブト味噌など、うまいものはあるんだけど…。また今年で 20年目を迎える「まいもん祭り(いさざ,さざえ,牛肉,かき)」に人を戻したい。
・町には、農業体験できる牧場、学校の合宿などに最適な建物一棟丸ごと貸し出す施設、キャンプやボート遊びはもちろん、満天の星空など、自然を満喫できる様々なメニューで皆様をお待ちしています。地震に負けず、がんばっています。応援してくださいと、ぜひお伝えください…とのことでした。
□栗田の所感
地震から1ヶ月。地震直後、災害ボランティア活動支援プロジェクト会議で手配していただいたオレンジ色のスタッフジャンバーは、穴水では主に地元の方々に引き継がれ、愛用されているのを目の当たりにし、地元がどんどんたくましくなっている様に感動すら覚えた。しかし所詮まだ1ヶ月。世間の風化は急速に進んでいるように映るが、本当の「復興」に向けた歩みはこれからが本番だ。私たちに何ができるのか、頻度や濃淡を考慮しつつ、これからも「被災者本位」「地元主体」への関わりを探求していきたい。そして、室崎先生の言われる「災害バネ」がいよいよキーワードとなってきた。それは地元がいかに踏ん張れるかと、外部の一人ひとりができることを実践していくことでしか達成されないはずである。みんなでもう少しずつがんばろう。それは、地震当初、「4日も5日も経っても、座布団3枚並べて敷布団代わりにしている高齢の避難者」から始まり、「全壊家屋に(たったの)70万円の配分」で終わりの日本社会であっては決してならないと思うからである。