RSY・令和3年8月豪雨水害への対応について(第11報)

みなさま
さて、RSYは8月27日より、8月11日からの大雨で被災した佐賀県武雄市を中心
に支援活動を継続しています。いまだ収束の兆しが見えない感染症や、気候変
動への拍車は、私たちの支援の在り方にも大きく影響を及ぼしています。
しかし、どんなに社会情勢が変わろうとも、公的制度が適切かつ効果的に運用
されると共に、そこからこぼれ落ちる方々への民間セクターの多様なサポート
や、先災地からの恩送り・恩交わしの活動が継続されることが、被災された
方々の生きる力の下支えとなることに変わりはありません。
RSYは、被災された一人ひとりに対し、できるだけ複数の選択肢を見出し、そ
の方自身の選択が尊重される環境づくりのために、必要なお手伝いを積み重ね
ていきたいと思います。RSYがこれまでご縁を頂いた、先災地の皆様、会員・
ボランティアの皆様、各分野のスペシャリスト、各種ネットワークの皆様に
は、引き続きのご指導、ご協力を頂ければ幸いです。
また、震がつなぐ全国ネットワークや、全国災害ボランティア支援団体ネット
ワーク(JVOAD)、各地で実直に被災された方々と向き合う仲間たちと共に、
新たな局面を迎えるこれからの時代に沿った連携と協働の在り方を模索してま
いりたいと思います。
以下、RSYの12月の活動報告です。
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【12月の活動】
報告者:RSYボランティア/加藤さん・宮島さん・RSY浦野
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あったかごはんプロジェクト
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●日時:12月18日(土)10:00~14:00
●場所:武雄市北方町Kさん宅
●ボランティア
Tさん・Kさん(西九州大学3年生/オカベース)
Rさん(おもやいボランティア/管理栄養士)
RSYボランティア(加藤さん・宮島さん)、RSY浦野
(取り組みまでの経緯)
オカベースのTさん、Kさんたちは、2年前の水害から、足湯やサロンなどを
通じて、被災された方々の一番近くで生の声を聞き続けていらっしゃいます
RSYもオカベースの皆さんとの活動を通じて、その眼差しや向き合う姿勢に、
沢山の住民が励まされ、日々の大きな支えとなっていらっしゃることを目の当
たりにしてきました。
その学生さんたちが、ふと「被災された方の中には、いつもしてもらうばかり
では申し訳ない、という気持ちを持たれている方がいる」とお話されました。
生きるための最低限の生活環境を整えことすら、自力では進められないという
現実の中で、多くのボランティアの支援を受けて生活が整っていくことがあり
がたいと思う反面、「してもらう側ばかりに立つ辛さ」もあることを知った、
ということでした。
私たちも同じように、過去の災害で何度も直面してきたこの課題に対し、熊本
地震の御船町の仮設住宅や、台風19号災害の長野市豊野区の自主避難所で行っ
た「あったか味噌汁プロジェクト」の事例を共有させて頂きました。味噌汁を
一緒に作って、一緒に食べるというだけのシンプルな取り組みですが、武雄で
もやってみたいというお申し出を頂き、「あったかごはんプロジェクト」の立
ち上げに繋がりました。
(取り組みの様子)
この活動には、おもやいボランティアのRさんも参加して下さいました。Rさ
んは管理栄養士でもあるため、非常に心強い助っ人です。メンバーで相談し、
今回は次の目的でプロジェクトを進めて行こうということになりました。
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水害によって心身の健康状態や生活機能、活力の低下がみられている世帯の
方々と、一緒に食事を作り、一緒に食べることを通じて、その方が本来持つ持
つ暮らしへの意欲や、人と関わる場を通じた楽しみや喜びを創出し、活力回復
の機会につなげる。
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今回お邪魔したのは80代のKさん夫妻宅。ご主人は体調を大きく崩し、食も細
く、ベッドからほぼ動かない毎日を送っていらっしゃいます。また奥様はご主
人の対応に疲れ、家の修繕も重なり落ち着かないご様子でした。おもやいでも
生活サポートを継続されていたため、RSY看護師チームも毎日通っていまし
た。
ボランティアがカレンダーに事前に丸印をつけていたのえで、数日前からこの
日を楽しみにしてくれていたようです。
当日のメニューは、九州地方の家庭料理「だご汁」。
事前の申し合わせとして、調理や食事の場づくりにおいては、ボランティアが
一方的に動くのではなく、Kさん夫妻と一緒に取り組むことを共通認識しまし
た。具体的には奥さんと料理を一緒に作る、もともとカメラ好きなご主人に活
動記録用の写真撮影を担って頂くことを目標しました。
奥様は野菜の切り方、だんごのちぎり方、味のつけ方などをボランティアに教
え、意欲的に一緒に取り組む姿が見られました。「こんなに大人数の料理は本
当に久しぶり」とお話されました。
ご主人は、「写真なんかとらんでええ」と、最初は怪訝そうな表情でしたが、
台所で人が動く姿を見たり、ボランティアから声をかけたりすることで、手持
ちのデジカメを取り出し、真剣な面持ちで調理の様子を撮影して下さるように
なりました。「カメラを持ったのは2年ぶりだなぁ」と一言。水害が影響して
止まっていた時が、再び流れ出したかのようでした。
この様子から、これまでの『してもらうことへの感謝』という一方向の関係
性が、『みんなと共に在る』という双方向へ関係性に大きく変化したようで
した。さらに、ご近所のMさんも遊びに来てくれ、一緒に調理し、食卓を囲
んだことで、『人への配慮やもてなしの気持ち』をご本人たちなりに表現す
る機会にもなったのではないかと思います。
今回の活動はとても小さく、ささやかなものでした。しかし、ボランティア
や近所の人たちと共に創り出す場こそが、無理のない形で「自分でもできる」
という自信と気づき、そして「やっぱりこの地域に住んでいてよかった」と
いう思いを生み出していくのかも知れません。
このような安心感や信頼感が、もともとご本人の中に潜在的にあった暮らし
の感覚を呼び起こし、結果的に活力向上と自尊心の回復に向けた可能性を広
げてくれるのではないかと感じました。
(ボランティアの感想)
★RSYボランティア(加藤さん)
・ご主人は、いつもとあきらかに顔つきが違った。「今日は顔色いいね」と声
をかけると、「みんなが来てくれてすごく嬉しい。いいなぁ。みんながいるの
は。こんな風に、『たまに』を、『時々』にしてくれるといいなぁ。普段はば
あさんと二人。だから今日は沢山人が来てくれてすごくうれしい」とのこと。
・普段はかなり食が細く積極的に食べようとしない方だが、だご汁に口をつ
け、「おいしかー!」と言ってくれた姿が印象的だった。帰りも「また来てく
れよな!」と言ってくれた。
・記録の写真撮る時の姿は、とても楽しそうだった。★RSYボランティア(宮島さん)
・ご主人は「写真はとても好きだったけど、2年間とってないなかった。前は

飼っている猫や花などよく撮影した。家の2階に現像する機械もある。これま
でもいろんな人が来て、写真とらせて!と言ってくるが、撮った写真を見せて
くれたためしがない。」とのこと。オカベースの二人が記念のアルバムボード
を作成予定だそうで、それを伝えると「楽しみだなぁ~」と言っていた。
・夏よりも奥さんの動きがとてもよくなっていた。人がいることが張り合いに
なっているのか、ちゃっちゃと動いている姿が印象的だった。水害当初の様子

から比較すると「あんなに動けるんだ!」と驚くほどだった。

★Rさん(おもやいボランティア/管理栄養士)
・ご主人の食の細さが気になり、どうにかして食べて頂ける方法はないかと思

った。
・奥さんと話す限り、甘いものがお好きな様子。今朝のごはんはクリームパン
と牛乳だったそう。今後またこのような機会があったら、甘いものもご用意で
きるとよいかも。
・奥様には、「作り方を教えてください」とお願いしたところ、沢山お話しし
ながら、料理にも積極的に参加して下さった。だご汁は楽しそうに作り方を教
えてくれた。「野菜は煮すぎ!」などの辛口コメントもあってボランティアと

の関わりがよい刺激になっている様子だった。

★Kさん(オカベース)
・最初にKさん夫妻と会った時、ご主人が「もう死んでもいい。足も動かない

から何しても無駄」という言葉を吐露された。しかし、ボランティアの介入
で、自らカメラを持ち出し、当初お願いしようとしていた「記録係」の役割を
見事に果たしてくれた。働きかけ方次第でこんなに気持ちや行動がかわるんだ
ということを知った。外の人が関わることで、自分の本音を言えるところがあ
るかも知れないと思った。
・近所の人、地域の人とのつながりがあり続けるということ、その人が家に来
て一緒にご飯を囲むということが、今後のKさん夫妻の安心感につながるとよ
いなと思った。
・学校で習う配慮の考え方と、今回自分が体験した配慮の考え方には違いがあ
った。よく、施設内の利用者さんと関わる時には、職員の方に利用者さんとあ
まり親しくしすぎると(呼び方、言葉遣いなど)「そのやり方はダメ」と注意
されるが、ここの現場では必ずしもそれがいけないことではないということが
分かった。親しく話しかけたら、沢山しゃべってくれるようになった。(「孫

やでね」と言ってもらえた)

★Tさん(オカベース)

・ご主人は、最初人が沢山きたので、「騒がしい!」という反応だった。で
も、最後には、「もう帰ると?」名残惜し気な感じだったので、楽しんで頂け
たのかな?と思った。このお宅にお邪魔するのは、今回で3回目。ご主人は
は、いつもよりおしゃべりも多かったように思う。
・夫婦間については、お互い結局いろいろ言い合っているものの、お互いのこ
とがよくわかっていて、支え合えている様子が見て取れた。
・ご近所のMさん(一人暮らし・床上浸水世帯)を食事にお誘いしたところ、
立ち寄って下さったので、一緒に団子をちぎって手伝って頂き、一緒に昼食も
食べた。プロジェクトの目標の一つにあった、『ご近所が集ってみんなで食べ
る』という場づくりが実現でき、その効果を感じることができた。二人の話も
盛り上がり、地域のつながりを確認したり、深めたりできる機会になったので
はないかと思う。
・このプログラムは、家でやるからいいのだと感じた。あまり人と関わること
に積極的に見えなかったご主人が、「こたつを動かせば居間に集まってみんな
で(顔を合わせて)食べられる」と言って下さった。普段は言いたくても言え
ない言葉が、外から人が来たから言えるということもあるのかな、と思った。
また、家で一緒に時を過ごすことで、生活の様子を垣間見れるのが一番よかっ
た。
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後日談・・・・・・
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翌日、RSYボランティアがアフターフォローの訪問に伺いました。
★加藤さんからの報告
お二人ともお元気な様子で、「楽しかったなぁ」という言葉を何度もおっしゃ
っていました。また、普段食の細いご主人は、夕食時におはぎ2個とだご汁の
残りを食べ「うまかった」と言っていたということで、一つのきっかけがもた
らす生活の変化に驚きました。
また、1週間後には、オカベースTさんが、再訪問して下さいました。
★Tさんからの報告
ご主人が玄関まで歩いて出迎えて下さいました!すごくお元気そうで表情もと
ても明るかったです。写真を見て、「おいしかったもんね!」とおっしゃって
いました。ご主人がカメラを指さして「こればっかりしよったもんね」と言わ
れていました。ご主人にとって、カメラは本当に生きる楽しみなのだと実感す
ることができました。
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サロンサポート
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●日時:12月19日(日)/13:00~16:00
●場所:久津具公民館
当日は、26人(幼児4名)が参加しました。たません作りが間に合わない位に次か
ら次へと住民の方がお見えになり、お友達も連れて来られた方も見えました。
【住民の声】
・やっと明日で工事が終わる。皆に助けてもらって有難たかった。ここに来る
と皆が明るく笑っているから沈んでいられないって思うの。でも1メートル位
浸かったのよ。支援金は少なかったからお金がかかる。だから家具は一切買
わないことにしたの。衣装ケースくらいで服もいらない。(60代女性)
・名古屋から美味しい物が来ていると聞いたので来てみた。暖かくて美味しい
ね、わざわざ名古屋から有難い。鍋も捨ててしまったので、幅広い料理が作れ
ないのよね。(70代女性)
●おもやいでは、スマートサプライを通じて募金をまだまだ
受け付けています。
https://smart-supply.org/projects/omoyai-202108
これは、遠くからでもできる支援です。ぜひともご協力お願いします。
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