みなさま
お世話になります。RSY事務局です。
平成30年7月豪雨から1年が過ぎ、水害が心配される季節に入りました。
RSYでは、水害が心配される地域への情報収集をはじめ、震災がつなぐ全国ネットワ
ーク発行の冊子「水害にあったときに」の発送対応や資機材の搬出など災害発生時の
対応を事務局内で再確認し、備えています。
北海道胆振東部地震の支援では、地元の支援団体を中心に足湯やマッサージケアなど
を通じた場づくり支援を継続中です。
遅くなりましたが、以下、6月に実施いたしました北海道での活動報告です。
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「広げよう!足湯で繋がる支援の輪 全国足湯ボランティアフォーラム in 北海道
~北海道胆振東部地震の今とこれからを考える~」を開催!
6月16日(日)10:00~16:00、真宗大谷派(東本願寺)札幌別院にて、 足湯ボラン
ティアフォーラム in 北海道を開催いたしました。 昨年9月の北海道胆振東部地震の発
生を機に、道内の支援団体・個人で結成 された「北海道足湯隊」。そのメンバーが
「今後も息長く被災者に寄り添う 活動を続けたい。そのために、より多くの方に足湯
ボランティアを知っても らいたい。」という願いから生まれた企画です。本企画で
は、足湯ボランテ ィアの始まりと本質、昨年発生した災害の被災地で展開された足湯
ボランテ ィア活動を振り返りました。さらに足湯体験を盛り込み、足湯づくしの1日と
なりました。
- 日時:2019年6月16日(日)10:00~16:00
- 場所:真宗大谷派(東本願寺)札幌別院 3階研修室
- 参加者数:約30名
・北海道足湯隊の活動を中心に、2018年度発生した災害の被災地で行われた
足湯ボランティアの取り組みを紹介し、被災者の「つぶやき」から見えてきた被災地
の現状と課題を整理する。
・「足湯ボランティア」の文化と活動の本質に触れ、現状の活動内容の方向性を確認
する。
・「足湯ボランティア」同士が率直に、悩みやアイデアを共有し、今後の活動への
モチベーションアップと、新たな仲間づくりの場を提供する。
〇挨拶
・加藤真樹氏(真宗大谷派東本願寺北海道教務所 次長)
北海道内には真宗大谷派(東本願寺)の寺院・教会が470カ寺あり、北海道胆振東部
地震が発生した際には現地災害救援本部を設置し、被害状況の把握に努め、特に被害
が甚大である寺院から順次、救援物資の配布とお見舞いを行った。また真宗大谷派災
害支援ネットワーク「じゃがネット」を通じ、北海道足湯隊と協働できていることを
嬉しく思う。自身も先日、足湯を体験し、身体だけでなく心もほぐれていくのを感じ
た。本企画を機に、足湯の活動が広がっていくことを願う。
・篠原辰二氏(一般社団法人Wellbe Design 理事長/北海道足湯隊事務局)
北海道胆振東部地震から1か月後に発足した北海道足湯隊。避難所から始まった活動
は徐々に仮設住宅やお寺、地域の集会施設などへと広がり、活動依頼も増えてきた。
当法人では北海道足湯隊の事務局を担っており、月に1度の定期ミーティングや各足湯
ボランティアの活動サポートを行っている。現在は隊員不足により、現地からの要望
に応えにくくなっている。本企画をきっかけに道内での足湯ボランティアの育成にも
力を入れつつ、今後も可能な限り北海道足湯隊のサポートを継続していきたい。
〇報告「北海道胆振東部地震の現状と課題」/定森光氏(NPO法人北海道NPOサポートセンター理事)
今回の地震で特に被害の大きかった3町(厚真町・むかわ町・安平町)の人口は約2万
人、北海道全体の人口に対し、0.3%の人口が被災しているのに対し、一部損壊以上の
世帯は8割以上、住民の大半が被害を受けた状況にあることが分かる。昨年11月に避難
所はすべて閉所し、350世帯以上が応急仮設住宅などへ移転したことにより、ボランテ
ィアによる談話室を活用した交流の場づくりや、居住環境のサポートが行政や災害ボ
ランティアセンターとの連携し行われてきた。
最近、課題となっているのは、半壊以上の被害に遭いながらも在宅で生活している、
在宅被災者の存在だ。該当する世帯は全体の半数以上いることが分かり、在宅被災者
を対象としたニーズ調査が進んでいる。現状の課題として、ニーズ調査から取りこぼ
されている被災者の存在が浮き彫りとなり、多様な形での被災者支援が必要となって
いる中、時間の経過とともに支援団体が減少しつつある。そんな中でも、発災当初か
ら継続して被災地域との関係性を築いている道内の支援団体の存在は心強い。このよ
うな団体を引き続き応援しつつ、増やしていきたいと考えている。
〇パネルディスカッション「2018年・足湯ボランティア活動~愛媛・広島・岐阜から
北海道へリレー~」/コーディネーター:松田曜子氏(震災がつなぐ全国ネットワー
ク)、コメンテーター:村井雅清氏(被災地NGO協働センター)
・本田綾子氏(北海道足湯隊)/活動:北海道勇払郡むかわ町・厚真町・安平町
発災当初から個人で災害ボランティア活動を開始。昨年10月、WellbeDesignを通じ
足湯に出会い、現在は足湯や訪問調査などでボランティアとして活動している。足湯
ボランティアでは、活動先との調整や足湯の担い手の育成等、活動の幅を広げてい
る。活動中の悩みとして、被災者に寄り添い続けるために団体として出来ることは何
か、仕事で多忙なメンバーのモチベーション維持などが課題である。
・飯嶋麻里氏(公益社団法人シャンティ国際ボランティア会)/活動:愛媛県西予市
シャンティ国際ボランティア会では、平成30年7月豪雨で被災した愛媛県西予市を中
心に活動を展開。「被災者の声を聴く」ことをメインに据え、その手法の一つとして
足湯が取り入れた。避難所での傾聴カフェをきっかけに、被災者の状況に合わせた活
動内容や場所を調整し、被災者が参加しやすい環境となるよう心掛けた。
また足湯ボランティアを継続することで、住民の小さな変化に気づくことができる。
自分の変化は本人でも気づきにくいもの。他者から見た変化をボランティアが伝える
ことで、足湯に参加してくださったことへのお返し(感謝の気持ち)にもなるので
は。それが結果的に住民を後押しすることにもつながっている。
・吉林奏(NPO法人レスキューストックヤード)/活動:岐阜県関市
平成30年7月豪雨で被災した岐阜県関市では、「生活再建を考える相談会&ミニ喫茶」
で足湯を取り入れ、リラックスした雰囲気の中でお話を聴くことができた。足湯を取
り入れたことで、地元社協との話し合いの中では、足湯のつぶやきを通し「拾い切れ
ていない声がある」「足湯の活動を地元にも残したい」という要望から、「地元住民
向け足湯講習会」の実施につながった。足湯講習受講後の地元ボランティアは、復興
イベントや地域サロンで足湯デビュー果たしたが、参加者もボランティアも同じ地元
住民だからこそ、相手の気持ちに耳を傾けることへの不安を抱えていることが分かっ
た。活動の際に身近な存在である社協職員や先輩ボランティアによる継続したサポー
トが必要であるため、今後も名古屋からできるサポートを続けたい。
・玉木優吾氏(しずおか茶の国会議)/活動:広島県呉市
平成30年7月豪雨で被災した呉市では、酷暑の中、避難生活が長期化。少しでもほっと
できる時間を提供しようと静岡県より足湯ボランティアを送り出したのが活動の始ま
りだ。地元社協や民生委員との連携を密にすることで、活動場所のコーディネートや
つぶやきの伝達をスムーズに行うことができた。また足湯で拾ったニーズの中から社
会サービスを活用する必要がある被災者に関しては、行政と共有する仕組みづくりを
徹底することで、なるべく早く対応できるような形を作り、支援の漏れを少なくする
ことができた。「つぶやき」の分析はじめ、活動で情報収集したものは、様々な年
代・職種のメンバーが集結する茶の国会議でも情報共有・連携で協議し、現場で活躍
するボランティアをサポートし、現地への負担を軽減するという機能を果たした。
・大竹修氏(被災支援団体おたがいさまプロジェクト)/活動:岡山県真備町
平成30年7月豪雨を機に「おたがいさまプロジェクト」を立ち上げ、月に1回ボランテ
ィアバスを出している。がれき撤去から始まった活動は、より被災者に寄り添う活動
を考え、仮設住宅への慰問活動に変化した。足湯などで定期的に伺い、「一人でも多
くの方との関わりを大切にし、心穏やかな時間を過ごしてもらいたい」の気持ちを忘
れず、活動を継続している。また子どもイベントと連携することにより、世代間の交
流と笑顔が生まれ、子どもが足湯ボランティアに参加するなど、活動の輪が広がりつ
つある。
また夏場の足湯希望者の減少が課題である。おたがいさまプロジェクトでは、ミント
等使った夏用入浴剤の活用を検討している。
〇基調講演「足湯ボランティアの本質を考える」/村井雅清氏(被災地NGO協働センター顧問)
足湯ボランティアの始まりである1995年阪神・淡路大震災当時も、今回の北海道胆振
東部地震でも、市民の自主的な動きが活発だった。自主的な一人ひとりの発想によっ
て行動を、普段から積み重ねていけば時代に社会は変わっていく。足湯ボランティア
は、震災当時、東洋医学を勉強していたボランティアによって始まった。
阪神・淡路大震災から2年を前に被災者の厳しい生活の一端を「つぶやき」から垣間見
え、約1,000人分の「つぶやき」の分析をもとに「市民がつくる復興計画―私たちにで
きること」(1999年)を発行した。そもそも「つぶやき」とは、阪神・淡路大震災か
ら1年後の1996年~1997年にかけ、当時仮設住宅で暮らしていた被災者からお聞きし
た「生の声」のことを、「ふだん着のつぶやき」と表現したことに始まる。より注目
し始めたのは新潟中越地震からだ。
過去の災害で聴かれた「つぶやき」をきっかけに被災者へもたらされた支援の事例を
紹介。足湯はお湯で足が温まるだけでなく、「言葉を吐き出す」ことが何よりも大き
な効果だ。被災者が言葉を吐き出すことで自分の気持ちの整理ができ、自分の考えを
肯定することに繋がっていくことが「心の自立の始まりのサイン」かもしれない。
「硬直した社会の仕組み」にはまっている人たちのそばに寄り添い、自分たちにでき
ることを探すのが、ボランティアの強み。ここで聴かれた声を抽出し、行動に移して
いくのが足湯ボランティアだと思う。ただひたすらに被災者に寄り添い、「枠を外し
て」制限をもたず、それぞれに出来ることを自由にやっていくことで、活動は広がっ
ていく。ボランティアはなんでもありや。
被災者一人ひとりへの寄り添い、それを積み重ねていくことが、社会の隙間に取りこ
ぼされてしまいがちな最後の1人までも救うことに繋がっている。その苗床を北海道は
じめ全国各地でつくっているのは、まさにあなたたちだ。
〇足湯ボランティア体験・活動紹介コーナー/北海道足湯隊&登壇者
〇交流会
・今回の地震でお寺関係の支援を中心に活動する中で、北海道足湯隊と出会った。お
寺、宗門を超えて様々な団体と協働できることは有難く、新たな視点を取り入れるこ
とが出来ている。今後も自分たちの目で耳で得た新鮮な情報を届けながら活動を続け
ていきたい。(本企画を実施するにあたり、会場手配等でご協力いただいた、災害支
援ネットワーク「じゃがネット」岸田氏より、ご挨拶いただきました。)
・北海道足湯隊って、大人のサークルのような集まりだと感じた。年齢も職種も異な
る道内のボランティアが、「被災者のために何かしたい」という思いで集まった。発
足当初から変わらず活動を続けているメンバーや、時々参加するメンバーなど、それ
ぞれのペースで活動に関わっている。(登壇者)
・活動場所が田舎になればなるほど、活動の周知は「住民同士の口コミ」と「定期的
に活動すること」だと感じた。(道内ボランティア)
・活動の中で住民から「うちよりも被害の大きいお宅があるから・・・」と言われる
ことが多いが、そう話すことで、「自分はまだ大丈夫、頑張れる」と言い聞かせてい
るのかもしれない。(道内ボランティア)
〇閉会挨拶
栗田暢之(NPO法人レスキューストックヤード代表理事/震災がつなぐ全国ネットワ
ーク共同代表)
自身の原点でもある阪神・淡路大震災での活動を振り返りながら、当時、共に奮闘し
た仲間を思い浮かべた。あれから24年が経ち、足湯のネットワークも広がりつつある
が、さらに広げていきたいと考えている。ボランティアはお忙しくされている方が多
いが、ボランティアそれぞれの意思を尊重しつつ、被災者に寄り添い続けてほしい。
北海道関係の支援はこれからが踏ん張りどころ。そのためには、自分も含め、モチベ
ーションの維持が重要となってくる。RSYとしても、震つなとしても、引き続き応援
していきたい。
- 北海道足湯隊(災害支援ネットワークじゃがネット/札幌市立大学学生・教員有志/ヘルピングハンズ足湯隊/北海道NPOサポセン足湯チーム/一般社団法人北海道介護福祉士会/一般財団法人北海道難病連/WellbeDesign足湯チーム/一般社団法人いっぽん/札幌発!東北大好き隊/東北大学足湯隊/認定NPO法人とちぎボランティアネットワーク/認定NPO法人レスキューストックヤード)
※本企画は赤い羽根「ボラサポ・北海道」助成金を受けて実施いたしました。